役員を中傷する文書を配布する等の行為は共同利益違反行為
【平成24年1月17日最高裁】
藤澤市にあるマンションの理事長Xは、区分所有者Yに対して、次の行為を繰り返していることは、区分所有法6条1項の「共同の利益に反する行為」であるとして、総会の決議を得て、これらの行為の停止を求める訴訟を提起しました。
1.Yは、平成19年頃から、繰り返し管理組合の役員が修繕積立金を勝手に運用したなどと書いた役員を誹謗中傷する文書を配布し、マンション付近の電柱にも貼付した。
2.マンションの防音工事や防水工事を受注した業者に対して、趣旨不明の文書を送付し、工事の辞退を求める電話をかけるなどして、その業務を妨害するなどの行為を続けている。
東京高裁は、Yの行為がマンション関係者や取引先に迷惑が及んでいても、騒音、振動、悪臭の発散等建物の管理または使用に関わるものではなく、被害を受けた者それぞれが差止請求または損害賠償請求等の手段を講ずれば足りるので「共同の利益に反する行為」に当たらないとしました。
これに対して、最高裁は、これらの行為は役員に対する個人攻撃にとどまらず、総会で正当に決議された防音工事等の円滑な進行が妨げられ、また、役員に就任しようとする者がいなくなり、管理組合の運営が困難になる事態が生じているので、マンションの管理または使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為である。
東京高裁の判決は、これらの行為は共同の利益に反しないと判断したが、法6条の共同の利益に反する行為の解釈を誤っているので、さらに審理を尽くしなさいとして、高裁の判決を破棄し差し戻しました。