増え続ける水害とマンションの保険
増え続ける水害とマンションの保険
(福管連だより2021年9月号掲載記事)
●水害の状況
近年、大雨による被害が増えてきています。以前より台風や河川の氾濫による被害はありましたが、最近は、短時間のうちに予測困難な集中豪雨がみられるようになってきました。雨の降り方も 局地化・集中化・激甚化し全国各地で毎年のように甚大な被害が発生しています。短時間雨量50mm以上の年間発生回数は、2011年から2020年の10年間の平均回数は334回と30年前の約1.5倍まで増加しています。また、近くに河川がないから水害対策はしなくても良いと考える方もいるかもしれませんが、内閣府のデータによれば、全国1,741市区町村のうち、10年間で一度も水害が発生していない市区町村はわずか60市町村(全体の3%)でした。
●近年の水害
水害といえば大雨や台風による「洪水」のイメージだと思いますが、近年では「内水氾濫」や「土砂災害」の発生が多くみられます。
「内水氾濫」とは、コンクリートで覆われた市街地などに短時間で局地的な大雨が降って下水道や排水路の容量を超えてしまい発生する浸水害のことです。近年、大雨や短時間強雨の発生数が増加傾向にあるため、内水氾濫が発生する可能性が高くなっています。2019年10月の台風19号で武蔵小杉のタワーマンションに浸水被害をもたらしたことは記憶に新しいところです。久留米市も筑後川に多くの支流が流れ込むため内水氾濫が発生しやすい地形となっています。
「土砂災害」とは、台風、集中豪雨、地震などで地盤がゆるんだり、亀裂が発生することによって起きる自然災害です。主なものとして「土石流災害」「地すべり災害」「がけ崩れ災害」などがあります。浸水の被害はありませんでしたが、平成26年8月20日に広島市北部、令和3年7月3日に熱海市で大規模な土砂災害が発生しました。
●水害とマンション保険
マンション保険では水害の被害に遭った場合の補償として「水災」補償特約があります。
⚫ マンションの機械式駐車場が水没し作動不動となった。
⚫ エレベーターの地下ピットが浸水し作動不能となった。
⚫ 給水ポンプが冠水したため破損。断水となってしまった。
⚫ エントランスから雨が入り込み、管理室等が水浸しになった。
等々 多くの被害が報告されています。
すべてが「水災」補償の対象となるわけではありません。一般的に保険の約款では以下の2つの基準が規定されています。
① 台風、暴風雨、豪雨による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ等の水害によって保険の目的である建物が床上浸水または地盤面より45cmをこえる浸水を被った結果、保険の目的に損害が生じた。
② 水害によって保険の目的が損害を受け、保険の目的である共用部分に、その再調達価額の30%以上の損害が生じた。
● 注目の新しい補償「機械式駐車場水災補償特約」
水災によってマンションの機械式駐車装置が損傷した場合、約款の水災補償では浸水条件に該当しない場合でも修理費用を補償する特約です。令和3年に新設された近年ご要望がとても多かった補償です。引き受け条件や保険金のお支払限度額等の条件がありますので保険代理店へご確認ください。
●ハザードマップの確認
直近10年間における都道府県別の年間最大水害被害額、福岡県は全国第10位。土砂災害警戒区域も18,250ヶ所あります。(「土石流」5,508ヶ所、「急傾斜地崩壊」12,519ヶ所、「地すべり」223ヶ所)。「浸水」のリスクはなくても「急傾斜地崩壊危険箇所」に該当地域があります。皆さんの地域はいかがですか。
ハザードマップは、皆さんが住むまちの災害時の避難場所や防災上の施設の所在地、災害危険箇所等の地図情報と風水害のリスクを簡単に調べることができます。
Webだけではなく各区役所や情報プラザなどで無料で配布しています。浸水の予想される区域やその程度は、雨の降り方や土地の形態の変化、河川や下水道の整備状況などにより変化することがあります。
「浸水」地域に該当しなくても「土砂災害危険箇所」に該当している可能性もあります。
マンション保険を検討する際は、ハザードマップを参考に、過去の水害状況、想定される被害、負担する保険料等総合的に判断するようにしましょう。
記事提供 株式会社フォルテシモ ファイナンシャル・プランナー 有田 裕輔氏