相続登記義務化とその背景
相続登記義務化とその背景
~マンション管理組合にとっての相続問題~
不動産登記法の改正により、2024年4月1日から不動産の相続登記義務化がスタートします。相続により不動産を取得した場合には、その日から3年以内の登記申請が義務となり、正当な理由なく義務に違反した場合は過料処分(10万円以下)の適用対象となります。
相続登記義務化の背景
不動産の所有者が亡くなったにも関わらず相続登記がなされないことによって、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明不動産」が全国で増加し、周辺の環境悪化や民間取引・公共事業の阻害が生ずるなど、社会問題となっています。この問題は高齢化により今後さらに深刻化すると考えられます。そこでこの問題を解決するため、2021年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。
分譲マンションにおける相続問題
上記「所有者不明不動産」問題は、分譲マンションにおいても大きな問題となっています。通常、組合員が亡くなった後は相続人が部屋や遺品の片付けを行い、相続登記を経て売却、賃貸などの処分を行います。ところが、近年、身寄りのない高齢者が増え、組合員が亡くなった後も相続人が現れないまま放置されるケースが多くなっています。
管理組合は、残された遺品や部屋の処分、滞納された管理費等の回収など複雑な手続きに頭を悩ませており、このようなケースは高齢化に伴い今後も増加が見込まれます。
管理組合として予防策は
相続登記が義務化されたとはいえ、直ちにすべての相続において登記簿上に相続人が公示されるということは期待できません。相続人が不明の状態で管理費等を滞納された場合に、専門職に相続人調査を依頼することもできますが、調査には費用がかかります。
また、法定相続人となる方が全員相続放棄をするなどして相続人がいない状態となると、さらに裁判所を介した手続きが必要となり、予納金等多大な費用がかかります。
このような事態を避けるため、管理組合としては、組合員に何かあった時の「緊急連絡先」の管理・更新の徹底に取り組むことが重要です。緊急連絡先がない組合員の方に対しては、遺言を残すことでマンションやその他の財産を誰に相続させるのか、あるいはどこかに寄付をするのか、生前から明確にしておくようアドバイスすることも有効です。
遺言は法的に効力を持たせるための要件がありますので、専門家に相談の上、作成されることをお勧めします。
福管連 賛助会員
かわが司法書士事務所
司法書士 上戸小百合