管理組合は組合員から町内会費(自治会費)を徴収することができますか
1.町内会費(自治会費)の徴収
一般にマンション管理の実際においては、管理規約の中で、町内会費(自治会費)についても「管理費等」の中に含めて、区分所有者から徴収できるようにしている事例が散見されます。しかし管理組合は基本的には「建物並びにその敷地および付属施設の管理を行なうため」の団体であり(区分所有法3条)、その業務もその範囲に限られることは当然です。
町内会や自治会は、当マンションの建物敷地に限らず、それを含んだ周辺地域の居住者で構成されますし、その加入は各居住者の各自の判断でするものです。ですから、その会費の徴収は管理組合の業務外の事項であると言わざるを得ません。町内会費、自治会費の徴収は管理規約で定められていても、法律的な拘束力はないと考えられています。
2.コミュニティ費用の徴収
先ごろ東京地方裁判所で、管理規約の「コミュニティ費用」負担の規定について、組合員はその支払い義務を拒否することができるのか、ということが、問題になりました。
この事件のマンションの管理組合の管理規約には、通常の管理費とは別に、コミュニティ費用という名目で、つまり親睦を図るためという目的で、1戸当たり月額100円の支払い義務を定めていました。
そしてこのコミュニティ費用は、おもに管理組合が年1回開催するハロウィンパーティ(予算は年額10万円)の経費に充てられていました。このパーティには、このマンションの区分所有者と居住者だけが、参加を認められていました。参加する人は、飲食代としてそれぞれ参加費を負担します。こどもたちに配られるお菓子の代金は、主催者の予算に計上されていました。
この事件について、東京地方裁判所の令和3年9月9日判決は、こう答えました。
「本件パーティの開催によって、マンションの住人が互いに交流を持ち、これによって一定の防犯効果を期待し、マンションの資産価値低下を防止したいとする、組合理事会の考え方には一定の合理性がある。
本件コミュニティ費用は主に、本件パーティのために支出されているが、自治会や町内会による会合とは異なる。アルコール等の飲食物にかかる費用はコミュニティ費用から支出されておらず、本件パーティへの支出をもって一部の住人らによる懇親会への支出と同視することもできない。
そうすると、コミュニティ費用の徴収は、その費用から本件パーティへの支出があることが想定されたとしても、これが管理組合の本来の業務の範囲をこえるものであることはいえない。区分所有法3条に違反して無効となることはない。」
中島法律事務所 弁護士 中島繁樹先生の著書「マンション管理の法律入門」より