欠陥住宅に建替えまで住んでいた利益・耐用年数が延びた利益はない

【平成22年6月17日最高裁】

- 最高裁 重大な欠陥がある建物の損害賠償に新判断 -

最高裁第一小法廷は、平成22年6月17日、新築建物の安全性に重大な欠陥があり、倒壊のおそれがあるとして買主から工事施工者等になされた損害賠償請求事件について、(1)倒壊するそれがある建物に社会経済的価値はないので建替えまでに住んでいたからといってその利益を損害額から控除することはできない、(2)建替えで結果的に建物の耐用年数が延びてもそれを利益として損害額の減額はできない、との判断を示し、名古屋高裁が認めた3700万円の損害賠償を命じた判決を支持しました。

最高裁は平成19年7月に欠陥マンションについて「主要構造部以外でも基本的安全性を欠く建物については不法行為が成立する」との画期的判断を下しましたが、今回も、「建替えて結果的に耐用年数が延びてもそれを(被害者の)利益とはみない」との新しい判断を下しました。

この点、宮川光治裁判官は補足意見として「建物を建て替え耐用年数が延びることを利益と考えると賠償が遅れれば遅れるほど誠意ない売主を利することになり公平ではない。」と述べています。