業務知識・判例

<第1回>判例に学ぶマンション法    中島法律事務所弁護士 中島繁樹


滞納した管理費の請求と回収
  1. 組合が組合員に管理費を請求する根拠について
     裁判所の法律解釈では、滞納している管理費を請求する根拠は2つあります。「〇〇号室の管理費は〇〇〇〇円とする」ということが、管理規約の中で定められていること、そういう規約がないときは、ある時期の管理組合総会でその旨の議決がされたことがあること、そのどちらかが根拠であるとされています。

     このことは、建物の区分所有等に関する法律の第19条が「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持ち分に応じて、共有部分の負担に任じる。」と定めていることの解釈にもとづきます。

     ですから、組合が管理費を裁判手続で請求するときは、訴状という書面の中に、請求原因として次のように記載しなければならないというルールになっています。

    ●管理規約を根拠とするときは、
    「管理組合は平成〇〇年〇月〇〇日の総会で管理規約を定めた。同規約によれば、〇〇〇号室の月額管理費は〇〇〇〇円とされている。この管理費の平成〇〇年〇月から平成〇〇年〇月までの分を請求する。」

    ●管理組合総会の決議を根拠とするときは、
    「管理組合は平成〇〇年〇月〇〇日の総会で、〇〇〇号室の月額管理費を〇〇〇〇円と決議した。この管理費の平成〇〇年〇月から平成○○年〇月までの分を請求する。」

     以上のことからおわかりかと思いますが、管理費の額を変更するときは、管理規約の定めを変えるのであれば総会で4分の3以上の賛成が必要ですし、管理規約の定めを変えるのでなく総会決議をするだけであれば総会で過半数の賛成を得れば足りるのです。

     いずれにしても、訴訟を起こす場合の証拠とするため、管理組合としては、その定めのある管理規約正本、又は総会議事録を保管しておく必要があります。



  2. 組合員に対して遅延損害金を免除することについて
     管理規約の中にはふつう、「組合員が管理費を支払い期限までに支払わない場合には、管理組合はその未払い金額について、年利○○パーセントの遅延損害金をその組合員に対して請求することができる。」という趣旨の規定があります。

     管理組合の理事長は滞納している組合員との回収のための交渉において、この規定があることをその組合員に説明して、早期の支払いがあればこの遅延損害金は免除してもよいとの条件を提示することがあります。

     遅延損害金という債権は上記の管理規約の規定によって当然に発生するものであり、これは管理組合の財産の一部を成すものですから、理事長が勝手に免除するなどの処分をすることはできないはずだと考えられます。たとえ総会であっても全員一致ではなく多数決という形で処分の決議をすることはできないというのが、法律の原則的な考え方です。

     しかしこれは実情に合いません。遅延損害金ぐらいは免除を認めなければ、滞納した管理費の本体であっても、回収はおぼつかないでしょう。

     したがって、理事長は滞納管理費を適切に回収する職責を負うという立場において、回収のために必要と判断されるときは、遅延損害金の全部あるいは未払管理費の一部であっても、相手方に対して免除することは許されると考えられます。このような考えを否定する裁判例はありません。そのような免除のときは、できれば理事会の承認(過半数でいいです。)を得ておくべきです。



  3. 滞納管理費の消滅時効について
     滞納している管理費は、その支払い期限から5年を経過したときに時効で消滅します(民法169条)。
    このことは、平成16年4月23日の最高裁判所の判決で明言されました。そのとき以来、マンション管理の実務はこの5年説にしたがって運用されています。

     滞納の期間が5年近くになったら、必ず訴訟提起などの時効中断の手続きをしておかなければなりません。

 福管連では、平成28年3月14日には国土交通省による標準管理規約が改正されたことをうけ、『滞納管理費等回収の手引き』全般的に見直しを行い、福管連モデル規約の改正を含めて事務処理編の充実や判例編の追加を図り、「滞納管理費等回収の手引き」第四版を平成29年1月に発行いたしました。

 滞納への対処法や事務管理を外部委託する場合の留意事項など、きめ細やかな「事務処理編」、内容証明郵便の発送から強制執行の手続き方法までわかりやすく解説した「法的手続編」、参考となる判例など、管理費等の回収の定石を述べています。是非ご活用ください。



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