業務知識・判例
<判例紹介>  理事長の助っ人になる判例紹介(21)

会計理事の金銭横領で理事長に485万円の賠償判決
 東京都世田谷区のマンションで、平成6年から平成19年までの13年間、一人の理事が会計を担当し、理事長や監査担当役員が適切な会計のチェックを行わなかったために、多額の金銭横領事件が発生しました。

同一人が会計理事を13年間務める!

 この管理組合は昭和46年に建設され、戸数が39戸とそれほど多くないので、管理は外部に委託せず、組合員による自主管理を行っていました。

 管理組合役員の任期は、規約では1年と定められていましたが、役員のなり手がなく、会計理事Aは平成6年から平成19年までの13年間、連続して会計理事を務めてきました。そして、管理費等が入金される預金口座の管理及び預金通帳、銀行用印鑑の保管も自らが行っていました。

 一方、理事長は、規約で毎年1回組合員に対する決算報告義務が定められていますが、Aから簡単な報告を受けるだけで、預金通帳の残高確認をすることもなく、総会への会計報告はAが行っていました。

 監査担当役員も、総会の直前に約1時間半から2時間、Aが作成している収支決算報告書、残高証明書、領収書束等の点検をする程度でした。

 その後、理事長はAから「管理組合の預金を流用し投資をしたが、失敗に終わった。それを埋めるために多方面に借金をしたため多重債務者になった。」と告げられたので、総会を招集し、その状況を報告しました。

 管理組合は、東京地裁にAに対し5,489万円の損害賠償を求める訴訟を提起し、勝訴しましたが、Aからの回収は困難考えられます。

理事長等の損害賠償額は「過失相殺」で9割を減額


 平成26年に入り、管理組合は、当時の理事長及び監査担当役員に対し、注意義務が欠けていた違反として損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。

 東京地裁では、理事長及び監査担当役員は管理が不十分であり、責任があると判断しました。
 しかし、「理事長は組合員に対し前年度経費に関する報告義務があり、組合員は、理事長を含めた役員の選任・監督について責任を負っている。それにもかかわらず、組合員は会計を含めた管理組合の管理運営への関心は高くなく、役員任せであったことも、Aによる横領が継続して行われた原因である。そうすると、横領行為の全額を理事長と監査担当役員へ負担させることはできず、損害の公平な分担の見地から、役員の負担は損害額の1割が相当である。」との判決を出しました。

 組合員にも責任あるということです。組合会計のチェックは甘くなりがちです。他山の石としてください。


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