業務知識・判例
東京都住宅政策審 分譲マンションの問題点と管理・再生提言

 東京都住宅政策審議会は、舛添 要一 東京都知事から「人口減少社会に向かう中、住宅政策の新たな展開はどうあるべきか」との諮問を受け、特に、「広く普及している分譲マンションについては、老朽化したストックが今後急増する見込みであり、管理の適正化や円滑な再生に向けた取組の強化が必要」として、今後のマンション施策の在り方等について、審議会としての意見を示すよう求められました。

 これに対して、審議会は平成27年9月3日に知事に答申しました。これは、東京都のこととはいえ、他地域の分譲マンションにも参考となることが数多く含まれていると考えますので、関連する重要なポイントを紹介します。
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  1. 分譲マンション168万戸のうち36万戸が旧耐震
     分譲マンションは、この17年間で倍増、約168万戸に達し、うち、昭和56年以前の旧耐震基準が約36万戸ある。さらにそのうち、昭和46年以前の旧々耐震基準で建築されたものは約7万戸あり、都心部や多摩地区に多い。
    高経年マンションの状況を見ると、着工から40年以上が経過したマンションの戸数は、平成25年末時点では約12.6万戸であるが、約4割が現行の容積率制限に適合しておらず、建替えが進まなければ、10年後の平成35年には、約3.4倍の約42.8万戸にまで急増する見込みとなっている。

  2. マンション購入者は「立地」、「販売価格」、「間取り・方角」を重視
     マンション購入者は、都が平成22年度に都内在住のマンションの区分所有者を対象に実施したアンケート調査によると、マンション購入時に重視した事項としては、「立地」、「販売価格」、「間取り・方角」の順に高くなっており、「管理費・修繕積立金の額」や「維持管理に対しての配慮」等の管理に関する事項はあまり重視されていない。

  3. 高経年マンションほど高齢化・賃貸化が進み管理困難へ
     都の実態調査では、築年数の経過したマンションほど、高齢化や賃貸化が進み、区分所有者の管理組合活動への参加が困難となり、管理に無関心な居住者が増え、役員の成り手がいなくなるなど、管理上の問題が多い傾向が見られる。

  4. 建替えは条件に恵まれた物件
     民間の調査によれば、全国で建替えが実施されたマンション(平成26年6月末までに竣工した物件)は202件で、約6割の117件が都内の物件。このうち、約9割の106件が区部の物件である。これまでに都内で建替えが実現したマンションは、建替え時の平均築後年数が約40年であり、そのほとんどが、駅からの距離が近い、敷地が広い、容積率に余裕がある、還元率(従前権利床面積に対する追加負担なしで取得できる従後権利床面積の割合)が高いなど、条件に恵まれたものとなっている。

  5. 耐震化の状況耐震基準
     都の実態調査によれば、旧耐震基準のマンション約1.2万棟のうち、アンケートに回答のあった約2,300棟の耐震診断実施率は17.1%、耐震改修実施率は5.9%となっており、この率は、大規模なマンションほど高く、小規模なマンションほど低くなっている。耐震診断や耐震改修を検討していない理由としては、費用負担が重いとするほか、高齢化や賃貸化により区分所有者の耐震化への関心が低くなっていることなどを挙げているマンションが多い。

  6. 旧々耐震基準マンションは耐震性が低い傾向
     公的助成を受けて耐震診断を行ったマンションの構造耐震指標(Is値)を調べたところ、旧々耐震基準のマンションについては、倒壊危険性が高いとされる0.3を下回るものも多く、耐震性が特に低い傾向が見られる。

  7. 管理が良いマンションが報われる市場の形成を
     管理が良好なマンションや適切な改修等が施されたマンションが高く評価され、資産価値の維持向上につながるなど、努力する管理組合が報われる市場の形成を図ることが必要である。

  8. 行政による各種支援策
    (1) マンションデータベースの構築
    (2) マンションの管理状況の把握及び管理不全の判定、改善支援
    (3) 優良マンション登録表示制度の改善と普及促進
    (4) 管理状況の価格査定への反映
    (5) マンション再生支援策の充実・強化
      1. 改修によるマンション再生に対する支援
      2. マンションの耐震化に対する支援
      3. 耐震性が特に低いマンションの場合、Is値を一気に0.6以上に引き上げる耐震改修工事を行うことは、費用面などから困難な場合があるので、段階的な耐震改修(最終的にIs値を0.6以上に引き上げる耐震改修計画を作成し、それに基づいて複数回に分けて段階的に改修を実施するもの)に対して、計画の履行を担保する仕組みを整備した上で、各段階における設計費や工事費への助成
    (6) 団地型マンションの円滑な再生
     団地型マンションの円滑な再生を図るため、段階的・部分的な建替えや、改修・売却などを含め、棟ごとに異なる再生手法の選択をしやすくする仕組みの創設、建築基準法に基づく一団地認定の廃止等に係る全員同意要件の緩和などを求めるべきである。


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