業務知識・判例
<判例紹介>  理事長の助っ人になる判例紹介(17)

管理組合の負担で専有部分給排水設備の更新工事はできるか
 給排水設備は、本管と枝管に分かれ、本管は共用部分として管理組合が管理し、枝管は専有部分として各区分所有者が管理すると管理規約に定められているのが通常です。しかし、枝管部分の管理は各区分所有者が行うと定められていても、それぞれの事情や考えがあり、区分所有者は必ずしも適切な時期に適切な修繕や更新を行うとは限りません。

 それで、最近では、給排水管について、共用部分だけでなく、専有部分も含めて管理組合が更新工事を行う事例か増えてきました。この場合、管理組合の資金で専有部分の改修ができるか問題になるところです。このことについて、次のとおり、平成23年9月22日付東京地裁の判決があります。業務の参考になると考えられますので、紹介します。

<事件の経緯>
 東京都渋谷区のマンション管理組合総会で、「給排水管の老朽化に伴う改修工事を、共用部分だけでなく、専有部分の給排水設備についても管理組合が改修工事を行い、その費用は全額修繕積立金から支出する。」と決議しました。

 さらに、その後の臨時総会で、「すでに給排水設備の改修工事が完了している住戸については、(1)専有部分の給排水管及び給湯管の更新工事費に限り返還する、(2)返還金額は管理組合が行う工事費の戸当たり平均値を基準とする、(3)返還額は各住戸のタイプにかかわらず一律とする」と決議しました。そうして、すでに改修工事を完了した各戸に約38万円を返還することにしました。

<区分所有者Aの主張>
 これに対して、すでに改修工事を完了している区分所有者A(先行工事者)は、約38万円の返還請求を行わず、次の理由による訴訟を提起しました。
  1. 専有部分の給排水管改修工事が終わっていない一部の区分所有者のみ専有部分の工事 
    を管理組合が実施しているが、管理組合の権限外の工事であり無効である。すでに工事を
    終えているAに対しても専有部分の工事費相当額の支払を求める。
    (これに対して、管理組合は、総会決議は管理規約に基づいており無効ではないと反論)
  2. 仮りに、総会決議が無効でないとしても、先行工事者Aが給排水管工事に使用した費用
    の適切な支払いを求める。

<最判所の判断>先行工事者に適切な補償を行うべき
  1. 一部の区分所有者のみの給排水管改修工事を行い、不均衡を生じたからといって、それだけでAから管理組合に、委任契約に基づき費用を返還せよとの請求権は発生しない。
  2. 管理規約22条2項に「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を、共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。」と規定されている。本工事は、管理上一体として行う必要が相当高いので、総会決議は有効である。Aが先行工事を行ったことは何ら非難されることはなく、その補償は適切に行うべきであり、不合理な取扱いは無効である。先行工事者に対する補償額は総会決議基準に従い、約38万円ではなく、約72万円を支払えとの判決を下しました。

<福管連注>
 専有部分給排水設備改修工事の費用負担については、いろいろな見解があるところですが「コンメンタール マンション標準管理規約(日本評論社)」78ページに、篠原みち子弁護士による「一体管理」に関し注意を要する事項が記されているので参考にしてください。


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