業務知識・判例
  福管連判例
 総会を巡る判例の解説
松坂法律事務所/弁護士 碇 啓太
マンションの総会運営を巡る判例の3ケース
1. 招集通知が送達されなかったことが問題になったケース
(東京地裁昭和63年11月28日判決)
 原告は1階が店舗で2階以上が住戸、11階建て、コンクリート鉄骨の建物の一階部分103号室(以下「本件店舗」という。)を所有しており、昼間は喫茶店、夜間は深夜営業のスナックとして、本件店舗を使用していました。

 この原告が裁判で争った理由は、招集通知が来なかったから手続き上の瑕疵がある。だから無効だということです。
被告管理組合は昭和60年10月11日、規約改正を議案とする総会を招集することとし、その通知を、規約案とともに本件建物の各区分所有者に発送。同時に、本件建物内の掲示版に掲示しました。

 マンション内に住所がある人、又は住所を届けていない区分所有者には、掲示をしたことでその人たちには通知したことになりますが、原告は本件建物に居住しておらず、総会の案内等の連絡先を通知していませんでした。

 そこで管理組合は、当物件の登記を調べ、そこに書かれた区分所有者の住所に議案の要領も送りましたが、送り返されてきました。管理組合は原則、店舗宛に通知すればよかったのにそれをしなかったわけです。

 区分所有法の35条の集会の招集の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知していなかったときには、区分所有者の専有部分の在る住戸に当ててするべきとなっていますが、原告は本件建物内に居住しておらず、また管理者に対して、集会の招集の通知を受け取る場所を通知していなかったことが認められる。したがって裁判所は、被告管理組合としては総会招集の通知を原告の所有する専有部分が所在する場所に通知するべきであったと言っているが、これをしていません。

 そこで、その総会招集手続きには瑕疵があるという判断をしているが、瑕疵があったとしても、それによって当然集会の決議が無効になるものではなく、右瑕疵が重大な瑕疵である場合に限り、無効となるものと解される。
ここは一つのポイント。

 手続き的瑕疵の場合には、その瑕疵が重大かどうかを裁判所は判断します。右総会の決議は議決権総数60人のところ、出席者及び委任状提出者、計57人の一致でなされたことが認められ、右、事実にかんがみると、招集通知の総会決議には総会決議には影響を与えるものとは認められないので、右瑕疵をもって、決議の重大な瑕疵とはいえない。という判断です。

 重大な瑕疵かどうかは適正に手続きが取られた場合に、決議がひっくり返ったかどうかを基本にして判断します。この判例を押さえておけば手続き上の瑕疵については概ねカバー出来ます。

 もう一つ、これは内容面に関係してきますが、特別の影響、規約の設定・変更・廃止などについてはその変更によって影響を受ける人がいる場合には、その人の承諾が必要ということです。それで裁判所がこの特別の影響をどういうふうに判断するかというところです。

 一般的な制約を、規約において、具体的に制約したとしても、そしてそれが一般的な制約の範囲内である以上、これをもって一部の区分所有者の権利に特別の影響を与えたものということはできません。

 住環境を著しく阻害するような風俗業、著しく臭気を発生するような業種。これが一階店舗にあったら、住人は嫌がります。

 一階店舗を使用する人も、他の人に迷惑をかけてはいけないと思っています。そこで裁判所はそれを、もう少しかっちりした言葉でまじめに言っています。おびただしい煙を発生する業種(中華料理店、焼肉店、炉辺焼店、焼鳥屋等)と規定し、右禁止条項に抵触する恐れのある業種を営業しようとする場合は、事前に理事長と打ち合わせ、その承諾を得るように規定しているが、だから、理事長と協議の上、承諾を得られれば営業して良いという規約ですね。
 本件建物は1階が店舗部分、2階以上が住居部分の鉄筋コンクリート造11階建ての建物であり、多数の区分所有者が共同生活を営んでいることが認められます。

 「深夜にわたり営業する場合は、他の区分所有者及び占有者の迷惑とならないように配慮しなければならない。」と規定しているが、これは当然配慮すべき事柄であるから、右条項が原告の権利に特別の影響を及ぼすものでないことは明らかです。この裁判例からは、本件規約はいずれも原告の本来の権利に特別の影響を及ぼすものとは認められません。
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2.議案の要領が通知されなかったケース
(東京地裁昭和62年4月10日判例)
 原告は、本件ハイツ6階602号の分譲を受けて所持しています。

 臨時総会において旧規約を廃止して、新規約を設定する決議をします。組合員は29名。総会の定足数は組合員の過半数の出席となっているが、本件臨時総会には14名の組合員しか出席していない。29名の組合員数の過半数となると15名の出席が必要だからと、原告は争いました。「本件臨時総会には、本件ハイツの区分所有者のうち14名が自ら出席していた以外に14名が委任状を提出していたと認められるから、28名が出席していたことになる。

 裁判所はこういうふうに言っています。

 委任状の提出は代理人によって議決権を行使するものと解されるから、定足数の算定に付き代理人によって議決権を行使する者を出席者から除外するべきものと解する理由はない。ゆえに定足数は満たしている。その争点はクリアしました。

 法改正に伴い旧規約を、これに即して改める必要があったので管理規約の変更を決議した。また、本件ハイツを、101号及び201号以外を住居専用にしてしまう規約を追加。さらに賃借人を代理人とする議決権行使の排除等、さまざまな制約を新規約の中に盛り込んだが、この議題・議案の要領の通知がされていないことで、裁判所は瑕疵があるとした。そして、規約の設定・変更については、重要だから、それについて議題・議案の要領が通知されなかったのは軽微ではない。だから無効だという判断をしました。
3.議案の要領の記載の程度が問題となったケース
(東京地裁平成7年12月18日判決)
 議案は、事前に賛否の確認が具体的にわかるようにしておく必要があります。重要な影響を及ぼす事項を決議する場合、区分所有者があらかじめ充分な検討をした上で総会に望むことができる他、総会に出席しない組合員も書面によって議決権を行使することが出来るようにしなければなりません。

 本件では、5号議案として規約規則の改正の件(保険条項、近隣関連事項、総会条項、議決権条項、理事会条項)と記載されていたにとどまっています。

 これは議題で、議案ではありません。

 それで裁判所は、議案の要領の通知に欠ける、要するにこれだけ見ても、それに賛成すべきか反対すべきか判断できないということで、瑕疵があると認定しました。
(決議の効力)
決議の効力については、規約規則の改正で、議案の要領の欠訣は組合の議決権行使を実質上困難ならしめるものであって、これをもって軽微な瑕疵とは認められないというふうに判断した。その中身は、一組合員一票にするというもので、組合員の議決権の内容を大幅に変更したものだ。もともとは専有面積に応じた議決権が与えられてたが、これを一人1組合員に1票と変更をした。複数の票数を有していた組合員にはきわめて不利益をきたすことになるので、これは重大な判断要素の一つ。
本件では、議題の通知しかしなかったが、住人は、たいしたことはないだろうと、多くの議決権を持っている人が、とりあえず委任状だけを出した。しかし結果を見たら自分たちの議決権が制約される。これは困ったということで裁判になった。もしこれが、招集通知に議案の説明が載っていて、自分を制約するような議案の内容だったとしたら、これには賛成しない。
ここでも裁判所は数を問題にしている。議決件数657票の4分の3である493以上の賛成票を集めることはできず、右決議は可決されなかったことが明らかである
 (1)重大な手続き違反の内容と、不利益の内容、それに加えて、(2)適法に通知がされていた場合に決議の結果がどうなったか、この2つを要素として、重大性を判断し無効としたという例です。


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