業務知識・判例
<判例紹介>  理事長の助っ人になる判例紹介(16)

組合員から訴提された役員の損害賠償金、訴訟費用、弁護士費用は組合が負担できる
  1. 東京地裁(東京地裁平成23年11月25日判決)
    (1)   A組合員は、管理組合理事長をしていましたが、度重なる議事録の改ざん等を行ったとして解任されました。これに対して、A組合員は、後任の理事長や理事、元理事長らに対し、虚偽の解任理由や中傷を記載した書面を配られたことにより名誉を棄損されたとして、損害賠償請求訴訟を起こしました。管理組合は、総会を開催して、応訴費用(弁護士費用着手金41万5千円、出廷費用50万円)を管理組合が負担する旨の決議をしました。
     東京地裁は、理事長らに対して賠償額30万円と遅延損害金の支払を命じました。
    (2)   管理組合は、再び総会を開催して、応訴費用のほかに、判決で理事長らの負担とされた賠償金(30万円)を管理組合が負担する旨の決議をしました。
     これに対して、A組合員は、この総会決議無効確認の訴えを起こしました
     東京地裁は、総会決議は定足数を満たした総会で有効に可決されたものであり、重大な手続上の瑕疵はない。また、管理組合からの理事長らに対する支出は、区分所有法で支出を禁じているものではないので法に違反せず、理事業務の遂行にかかわりA組合員から訴えを提起されたものなので、組合活動に該当するとし、A組合員の請求を棄却しました。
  2. 控訴審(東京高裁平成24年5月31日判決)
         A組合員は、東京高裁に控訴しました。
         東京高裁は、次の理由を示し、A組合員の控訴を棄却しました。
    (1)   総会決議の手続きは、いずれも規約の定足数を満たした総会において、規約の要件を満たして可決されたものであり、手続き上の不備を認めることはできない。
    (2)   個人の応訴費用及び裁判所から支払を命じられた賠償金を管理組合が負担することは、マンション管理組合の理事としての業務の遂行ないし業務の遂行にかかわる行為に関する費用の負担であり、管理組合の自治に委ねられた支出であるということができ、適正な手続きによる総会決議に基づいて支出することとしたものであるから、これをもって、公序良俗に反するとか、違法である等ということはできない。
    (3)  規約28条において、管理費の使途として、敷地及び共用部分の通常の管理に要する費用(9号)、組合の役員活動費(11号)、その他組合の運営に要する費用(12号)等をあげており、共用部分の管理のための支出のみならず、マンションの維持・管理を円滑・適正に行うための支出として総会または管理組合のその他の機関が適正な手続きにより決定した費目も、管理組合の自治に委ねられた適正な支出であるということができる。
     役員個人が被告になっているという理由だけから、個人として訴えられた者について、管理者が訴訟費用を支出することはできない、ということはない。
    (4)  個人の損害賠償金の管理組合負担の総会決議は、マンション管理組合の決議としては異例のものに属するが、理事としての業務の遂行に属する費用であり、管理組合の自治に委ねられているものというべきである。
 最近、組合員から、理事長その他の役員が訴えられることがありますが、組合業務に関するものであれば、訴訟費用、弁護士費用のほか損害賠償金までも組合費用からの支出が認められるという、適正業務を遂行する役員にとって心強い判決です。(福管連)


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