業務知識・判例
判例:会計帳簿のコピー請求の是非
松坂法律事務所 弁護士 中村 匠吾 
 管理組合法人の会計帳簿等につき、規約で閲覧請求のみが規定されている場合の謄写請求の是非(東京高判平成23年9月15日判決・判タ1375号223頁)
1 事案の概要

 本件マンションの規約には「理事長は、会計帳簿その他の帳票類を作成・保管し、組合員の理由を付した書面による請求があったときは閲覧させなければならない」という内容の規定があるところ、区分所有者であるXらが、管理組合法人であるYに対し、上記規約は当然に謄写請求も認める趣旨を含むものであるとして、平成18年度ないし平成20年度の会計書類一切を閲覧、謄写することを求めた事案です。

 一審判決は、閲覧請求権は、区分所有者が管理組合・役員に対して有する監督是正権の前提であり、会計帳簿等を検討する場合には数字の検討、対比を必要とするため、閲覧のみでは充分に目的を達成できない場面が容易に想定されることから、閲覧請求権の対象となる文書については、閲覧に加えて謄写も求めることが出来るなどとして、Xらの請求を認容しました。
そこで、Yがこの一審判決に対して控訴したのが本件です。

2 判決要旨
  本判決は以下のとおり判示してXらの謄写請求を認めませんでした。
 「謄写するに当たっては、謄写作業を要し、謄写に伴う費用の負担が生じるといった点で閲覧とは異なる問題が生じるのであるから、閲覧が許される場合に当然に謄写も許されるということはできないのであり、謄写請求権が認められるか否かは、当該規約が謄写請求権を認めているか否かによるものと解される。」

 「本件規約で閲覧請求権について明文で定めている一方で、謄写請求権について何らの規定がないことからすると、本件規約においては、謄写請求権を認めないこととしたものと認められる。」
3 解説
 管理組合規約に閲覧のみ規定があるだけで謄写の規定がない場合において、閲覧に加えて謄写請求権が認められるか否かについては、本判決と異なり「閲覧対象書類が多数の事項、金額等を記載した会計帳簿等である以上、閲覧者においては、金額の対象や計算その他の分析等が必要となるものと解されるが、これを閲覧の場で正確に行うには長時間を要するおそれもあり、閲覧対象書類の点検に正確を期すためには、当該書類を謄写する必要性が高いというべきであり、また、本件管理組合の業務の面からみても、長時間にわたる閲覧に対応することは、業務に支障を生ずるおそれがあると考えられるから、謄写機械が発達している現在においては、条理上、謄写も許されると解するのが相当である。」として、謄写請求を認めた裁判例もあり(東京地判平成21年3月23日判決)、判断が分かれています。

 区分所有者の有する監督是正権は自らの資産であるマンションを保持するために重要な権利であるため、その前提となる閲覧・謄写請求権は出来る限り認められる方向で考えた方が良いと思います。
そこで、個々のマンションの状況にもよるとは思いますが、管理組合規約に、謄写費用の負担を区分所有者に請求することが出来ること、閲覧・謄写の場所・時間を限定することが出来ることなどの条件とともに、閲覧・謄写請求権を認める規定を置くことを検討することは、よりよいマンション管理・運営の実現に資する場合があると思います。


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