業務知識・判例
<判例紹介>  理事長の助っ人になる判例紹介(14)

区分所有者からの会計帳簿類の「謄写」の請求は認められるか
 管理組合の会計帳票類の閲覧・謄写(コピー)を認める、認めないといったトラブルがあります。この場合、特に問題となるのは、@閲覧だけではなく、謄写も認めるべきか、A閲覧の範囲はどこまでか、の2点です。これに関して、参考となる判例がありますので紹介します。

 なお、このマンションの管理規約は、標準管理規約と同様に次のとおり定められています。
「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。」。

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 東京都世田谷区のマンションで区分所有者4名が、管理組合法人に対し、理事長と会計責任者の収支に不明な点が多く、適正に経理処理がされているかを確認する必要があるとして、平成18年度から平成20年度までの会計帳票類「一切」の閲覧と「謄写」を求めて、東京地裁に提訴しました。管理規約では、「謄写」を認める規定はありません。

 東京地裁では、規約で閲覧だけが定められていて、謄写の規定がない場合でも、閲覧請求権が認められている趣旨及び会計帳簿等が相当量に及ぶことから、謄写も認められる。ただし、謄写は、閲覧書類がある場所での謄写に限るとしました。また、閲覧請求権の範囲は、理事長が自ら作成した上で保管している書類に限定されるべきではなく、その記録の基礎となった預金通帳、請求書、領収書といった書類も含まれるとの判決を下しました。<23.3.3判決>

謄写を認めるかどうかは管理規約の定めによると東京高裁判決

 東京高裁の控訴審において、管理組合法人側は、「会計関係の書類の閲覧謄写を認めるか否かは、当該団体の規約によって自主的に決められるべきものであるが、当組合には謄写を認める規定がないので、謄写は認められない。」と主張しました。
これに対して、区分所有者側は、「閲覧の定めには、謄写も含まれていると解釈するのが当事者の合理的意思にかなう」主張しました。

 東京高裁は、「謄写をするにあたっては、謄写作業を要し、謄写に伴う費用の負担が生じるといった点で閲覧と異なるので、閲覧が許される場合に、当然謄写も許されるということはできない。謄写請求権が認められるかどうかは、自主的に作成した規約上に謄写請求権を認めているかどうかによる。区分所有者側は「閲覧しか認めないと長時間の閲覧が必要となる。謄写が認められれば閲覧時間は非常に短くなり、謄写を認めることは、管理組合側の利益にもなる」というが、閲覧は、社会通念上相当と認められる時間内に閲覧をさせることで足り、1回の閲覧請求で不相当に長時間閲覧が認められるものではない。」として、謄写は認めませんでした。

 閲覧の範囲については、「会計帳簿だけではなく、総勘定元帳、現金出納帳、預金通帳及びそれらを裏付ける領収書、請求書等会計書類一切を閲覧させよ」として、区分所有者側の請求を認めました。<23.9.15判決>


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 標準管理規約では、64条(帳票類の作成・保管)関係コメントで、「作成・保管すべき帳票類としては、第64条に規定するものの他、領収書や請求書、管理委託契約書、修繕工事委託契約書、保険証券等がある。」として幅広く認めているので、地裁、高裁の判決は解釈が拡大されたものとはいえません。謄写は、規約に定めがないので認めないとしたのも納得できます。


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