マンションコミュニティセミナー
〜マンションだから孤独死・無縁社会は防止できる〜

「無縁社会とならないマンションづくりのために〜支えあう豊かな地域をめざして〜」
講師 NHK放送局 チーフプロデューサー  板垣 淑子氏

 平成23年11月19日(土曜日)天神ビルにて福管連セミナーを開催しました。福管連の通常のセミナーとは少し趣を変えた、「無縁社会をテーマ」にした講演会です。

 講師にNHKチーフプロデューサーの板垣淑子氏をお迎えし、2010年NHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」(菊池寛賞を受賞)で取り上げられたテーマを題材に同テーマの映像を交えながらご講演いただきました。
【東日本大震災の取材から】
 NHKスペシャル「無縁社会」のテーマでその後31本のキャンペーン企画が放送されることになっていたけれど、その途中で東日本大震災があり、福島原発事故にかかわることになったことから、まず、話されました。

 この震災で「人と人とのつながり・絆」が強くなり、無縁社会派なくなるのではないかと言われましたが、無縁社会は解決するどころか深刻化しています。

 福島では経済力・体力がある人たちはどんどん他の地域に移住していく中で、一人暮らし、高齢者の人たちは取り残されていました。

 取材に行くと、寝たきりのままベッドに横たわる人。車いすが倒れたまま起き上がれず、放置され、脱水症状になり意識も混濁していた人。3〜4カ月間誰とも話をせず、声が出なくなってしまった人など。一人暮らしの高齢者でも元気な人ほどSOSを発しない。そう言う状態を見てきました。

マンションの事例をあげましょう。
 最近【特殊清掃業者】という職業があることを知りました。ある業者に密着する取材した中での、都内のゴミ屋敷の話です。
83歳の女性。夫に先立たれ、身寄りもない。

 認知症ですが、本人が申請しないために公的保護が受けられません。ゴミを捨てることが解らなくなってしまった。福祉清掃(公共の制度:本人が嫌がっても清掃する)で、4tトラック3台半のゴミ。ゴミを捨てている間も泣き叫んでいたましたが、仏壇からご主人の写真が出てきたところで、ようやく笑顔になり、「お花を買って来なくっちゃ」と言われるようになりました。それで、「きれいになったので、介護サービスを受けたらどうですか。」との問いにようやく納得し、素直に書類に判を押して、介護サービスを受ける事ができるようになりました。

 この女性には、マンションに知人はおらず、フロントの人が、彼女が夫の死後、公園で毎日泣いている姿を目撃したということでした。

【無縁社会には三つの縁が薄れる事に原因がある】
(1)地縁:地域・ふるさと
(2)血縁:親兄弟などの家族
(3)社縁:仕事・会社(リストラ等)

 この三つの縁にゆがみが生じた事で起きるのが、無縁社会です。この事に警鐘を鳴らすために、製作したのが、この「無縁社会」という番組です。
【会場で上映された映像から】
 同テーマ初回の映像から前半22分が上映されました。

 無縁死について、2008年度1783の自治体を調査したところ、年間3万2千人にものぼり、特に単身者が多い。大部分は、無縁墓地に葬られるが、一部では、大学病院などへの献体や産業廃棄物として処理するなど、データを残していない自治体が2割程度あるために概数表示になっている。
 無縁死は「行旅死亡人」として、遺体引取りを親族に呼びかける目的で、国の官報に掲載される。遺体は自治体により火葬され、遺品は5年間保管される。家族があるのに、引き取られないケースが多い。
 遺骨は宅配便で受け入れ可能な寺へ送られる。

 遺骨を受け入れている北陸のあるお寺の住職は「人生の終盤で孤立してしまった。これは不条理で本当におかしい事だ」と話している。
【今、孤独の中で、生きている人に】
たった一人で亡くなる人がいる一方、今、生きている人にも不安の中で孤立している人もいる。
 その人たちの事を紹介されました。

 NPO法人で西日本に「絆の会」というのがある。家族に代わって、火葬・埋葬・遺品整理など180万円から様々な料金プランがある。葬儀や読経などを加えると高くなる。

あるマンションの9階に住む一人暮らしの80歳の女性の話。
 看護士、助産士などで70歳まで働き、親を看ることで婚期を逃した。顔見知りが一人もおらず、墓石を立てたいと「絆の会」と450万円の契約をした。その女性の継続取材の途中、病気を発症された。病院に入院、手術するには同意書がいるが、身元引受人になれる親族もないことから、大企業の身元のしっかりした方に身元引受人を依頼したところ、病院側から、「身内でないと駄目」と言われた。「規則ですから」の一手張り。

 やむを得ず、病院から紹介され、「身元保証人代行サービス」に依頼をした。簡単にゴム印1個。1回が2万円書類2通作成で、合計4万円を支払い手術が可能になった。高齢化の時代に合わない制度です。
ライフスタイルが1人暮らしになっていることを考えると、「世の中の土台」を変えていかなければいけない事を痛感します。

 その後、その女性はマンションの一人暮らしは怖いと有料老人ホームを探されたが、年金8万円弱では、公的な施設しかないが、特養は当時42万人待機登録。おまけに、彼女は要介護0だったため、職員から、「10年待っても無理だ!」と言われました。

 地域的取り組みと公的制度の双方で安心できる取組みが出来ると良いと思います。

【公的な取り組みの事例】
事例1 ベルが結ぶきずな
大阪市の公的な取り組みを紹介。

 市が社会福祉協議会や訪問ヘルパーセンターなどと協力し、65歳以上の1人暮らし宅に防犯ブザー設置した。

 何かあれば、予め、登録している電話番号先2箇所(家族等の2軒や訪問センターなど)で、ベルが鳴る。いざとなれば介護士等が駆けつけるシステム。ベルを設置した事で、地域とのつながりが深まってきた。

事例2 赤い人形が生きている証
 17階建てマンションに住む男性。妻を亡くした。地方公務員でも幹部にまで上り詰めたけれど、マンションでは誰も知らない。たまたま隣室の高齢の女性が骨折し救急車を呼んだ。そこで、初めて隣人を知る。その後、退院の挨拶にみえたご婦人と話された中で、お互いが独居であることがわかり、今後について相談した。

 朝、彼が新聞を取りに出るときにドアノブに赤い人形をぶら下げる。女性は、外出などする際、自分のドアノブにその赤い人形を移し変える。翌日はまた、男性が自分のドアノブにその赤い人形を移し変える。こうする事で、互いの生存確認ができるようになった。

【無縁社会をもっとポジティブにしたい】
どうしたら、無縁社会をもっとポジティブに考える時期にきているのではないか。できそうな知恵があれば、NHKスペシャルのホームページにでも紹介させていただいて、皆で力を合わせてこの無縁社会を乗り切って行けたら良いなと思っています。

【会場からの質疑応答の一部】
Q.当マンション(築40年99戸)独居老人30%、高齢者夫婦20%であるが、身元、出生地、年齢は守秘義務として理事長・役員には個人情報保護法により、情報として共有できない事もあり、隣近所に誰がいるのか分からず、手助けができません。
A.個人情報保護法との兼ね合いがあるが、マンションの中であれば意識を統一して名簿等の作成をすることができるので、進めてください。

Q.都会と中山間地域の無縁社会の状況(程度・
対策・特性)は違いますか。
A.青森のりんご農家などの農漁村は、地域に住
居が点在しているため、ステーション作りが難しい。3〜4万円の低年金で、生活しており、介護も受けられない。孤独死について過去に取材した6件すべてで、建物を壊すときに、白骨化した遺体が発見されました。
青森のある施設長がこう言っていました。
「団塊の世代は、親を介護する最後の世代であり、子どもに介護されない最初の世代」と。

Q.マンションの空間(ロビー)に集会スペースを作っている例はないか。
A.たくさんの例があるが1つだけ紹介。あるマンション(400戸のマンション)で、土曜日にマンションの集会所でラジオ体操と食事会をやりましょうと提案。最初は2人だったけれど、3ヵ月後には20人になった。皆さん体操の後の食事会を楽しみに集まるようになった。残念なのは、集まったのは全員女性だったこと。
【孤独死は圧倒的に男性が多いけれど〜】
 孤独死は圧倒的に男性が多い。それは、フルタイムの仕事をしてきた事で、退職後に地縁が始まるのだが、その地縁を作れずに過ごす人は多い。
【明るい活動例】
事例1  名刺交換で一気に話題沸騰
 ベッドタウンで地縁の薄い地域。昭和48年に建設。埼玉県の巨大団地管理組合で管理会社から自治会を作ろうとの提案があり、定年退職をする男性をターゲットに声をかけたところ、20数名が集まった。

 しかし、当初、活動は全く活発化しなかった。担当者が、知恵を絞って考えついたアイディアが「名刺」。1人1人に責任ある役割と肩書を作った。クリーン隊長、緑の○○隊長など。その肩書きの名刺をそれぞれ作ったところ、名刺交換が始まり会議も活発化、次々と色々なアイディアを提案され、孤独死防止にもつながった。

 その一つが週に4回あるゴミ出し(リサイクル回収、燃えないゴミ、燃えるゴミ)を月500円で請け負うというアイディア。

 高齢者は無料では遠慮するが有料であれば頼みやすい。請け負う側も責任が伴い、出し忘れがない。また、少しでも収入があるので高校生なども協力するようになり、その度に週4回は挨拶をするようになった。

 以前20件近くもあった長期間放置などを含めた孤独死が、この活動が開始される事によって、5日も発見されないような人はいなくなった。

事例2 話す人と聞く人でパワー交換
 千葉房総半島のフリースクール。不登校や虐待などが原因でひきこもり、扱いの難しい子どもたち。寄宿生活をしながら、元の生活に戻したいと願う。そこで、学校側が高齢者のパワーを借りたい。お金をかけずに取り組みたいと提案した。それが、子供たちに戦争を語り聞く事を課外授業とする提案。

 老人は楽しみに子供たちを迎え、話し続ける。子供たちは自分達が行く事で、喜んでくれる人がいることを感じ、役に立っている、と思うようになる。半年後、お互いに、見違えるほど元気になった。
 コミュニティ形成には、「自分を必要としてくれる場所があること」が最もじゅうよう。そのつながりを作る第一歩を踏み出すには、ある種のおせっかい・面倒くささを超えるかかわりが必要なのではないだろうか。

講演の最後はこう結ばれました。
紙面の都合で講演のほんの一部しか、掲載できなかったことをお詫び申し上げます。

【取材、編集:福管連理事 平田素子】


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