講演「総会の正しい開き方のポイントと総会をめぐる判例いろいろ」
中島法律事務所 弁護士 中島 繁樹
 平成23年3月26日【土】午後、福管連では春の恒例行事となっています、「福管連模擬総会」の後、中島繁樹弁護士に「総会の正しい開きかたのポイントと総会をめぐる判例いろいろ」と題して講演していただきました。

 先ほどの模擬総会をどのように思われたでしょうか? 「あの程度であれば、自分でやれるなあ」と思われたら良いのですが、司会は自分にはなかなか荷が重いと思われた方があるかもしれません。

 今日の司会の方は、なかなか手馴れた方で、すいすいとおやりになられたから問題はないのですが、あそこまでやらなくても、これからお話します10項目のポイントを忘れずにやれば何とかやれるのだということ、自信をもってやっていただきたいのです。

▲福管連恒例の模擬総会
ポイント1 人が集まって議論すること
 組合員の賛成や反対は議決権行使書等で分かるとしても、人が集まらなければ決議することは出来ません。意見を聞く、人の顔を見ながら議論する、そして結論を出すと言うこと。人が集まって議論するということが大事だということを理解してください。反対者がいる場合、書面による多数決ということは許されないのです。

 規約42条第3項
「理事長は通常総会を、毎年1回新会計年度開始以降2ヶ月以内に招集しなければならない。」
賛成や反対があらかじめ分かっていても年に一回は集会をしなければならないのです。議長になる方は、顔をあわせて意見を言わせさえすればよいのだと、気楽におやりになれば良いのです。
ポイント2 「議決事項」について審議すれば足りること
 総会を開く目的は、規約で決められた議決事項について、議論して結論を出すことです。それが目的だと言うことを認識することが大切です。規約に定められた議決事項以外の議題については、総会という場で議論する必要はないわけですから、意見交換会という形式で議論してもかまわないということになります。その場合は、総会を意見交換会に切り替えても切り替えなくても、どちらでもいいということです。

 議決事項というのは何かというと、規約にきちっと決められているのです。
 監事報告書の承認の件という議題は議決事項ではありません。

 大事なのは標準管理規約第48条の総会議決事項に掲げられている15項目について、きちんと結論を出していく、ただそれだけのことだと思ってください。

 それ以外のことを議題にあげても一向に構わないのですが、それは議決を経なければならないと決められていることではないから、どういう結末になっても何の問題もないのです。
ポイント3 招集するとき会議の目的である事項<議題>を示すこと
 規約43条第1項にこう書いてあるのですね。「総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前までに会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。」
議題の通知をしていない事項を総会で議論しても構わないのですが、そこでいくら結論を出しても有効に決めたことにならないのです。

○判例A……集会の招集が法定の一週間前に行われなかったというルール違反があったことにより、その手続き違反の総会に欠席した人が1名いたとしても、1名の人の利益を守るために総会の決議を無効にするのはいかがかということで、総会での決議を無効にはしないという裁判例があります。(神戸地裁姫路支部H9.5.27判決)

○判例B……「議題の通知がなかったため、決議を無効にした事例」(東京地裁S62.4.10判決)があります。

○判例C……「転居した区分所有者に通知しなかったが、これは重大な瑕疵にはあたらず、決議は無効ではないとした事例」(東京地裁S63.11.28判決)があります。違反は違反ですが、常識的な判断をしたということになります。
会議の場での臨時の決議は有効ではありません(規約47条9項)。
議案の要領の通知も必要な場合があります(規約43条4項)。

○判例D……「招集通知書に議案の要領が記載されていなかったため、管理規約改正の決議を無効とした事例」(東京高判H7.12.18判決)があります。
ポイント4 要件を満たした者を代理人とすること
 規約46条5項、6項
「書面または代理人によって、行使することが出来る。」代理人によってというのを示すのが委任状であるわけです。総会の出席者には区分所有者本人が出席する人と、区分所有者から委任を受けて出席している人の2種類あるわけですね。

 白紙委任状とは、誰を委任にするかを勝手に決めてくれというものですから、理事会が前もって白紙委任状を受け取ったら、白紙の部分に前もって、誰が代理人となるのか書き込んでおくべきですよね。委任を受けて実際議決権を行使する方を前もってキチンを決めておく必要があろうかと思います。
ポイント5 開会にあたり定足数を確かめること
 定足数と言うのは総会を開くにあたって、何人出席したら、総会が開かれるかと言う数の事です。

 これは組合の規約によっていかようにも決められるのですが、国交省が決めた標準管理規約では議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならないのです。

 定足数が足りてなければ総会は成立しません。「流会」と言う用語で言うわけですけども会が流れてしまうのです。
▲模擬総会後の中島繁樹弁護士による講演会
 規約47条1項
「総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。」
 規約46条4項
「組合員は書面又は代理人によって議決権を行使することができる。」

○ 組合員の資格は、区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失する(規約30条)。

○ 判例E……「区分所有者の決定基準としては画一的で明確性のある登記簿上の記載によるべきである。」(神戸地裁H13.1.31判決)という裁判例があります。
ポイント6 理事長が議長になること
 規約42条5項
「総会の議長は、理事長が務める。」
ほとんどの管理組合の規約はこうなっています。自分はしたくないから、副理事長さんかどなたかやってくださいよということで人まかせにすることもあるようですが、それはおやめになったほうが良いです。規約に違反するわけにはいかないのですから。
ポイント7 決議するとき表決数を確かめること
 議案の説明を議長がしなければいけないということは何もないのです。議案の説明を自分でしなくても、誰にさせるかを議長さんが決めれば良いのです。議長は議事の進行役であって、議案の中身の説明までの責任はありません。出来るだけ誰かに説明させたほうが良いと思います。

 規約47条2項
「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」
「次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。」特別決議が必要なのは5つです。
規約の制定、変更又は廃止
敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提議
建物の価格の2分の1を越える部分が滅失した場合の滅した共用部分の復旧
その他総会において本項の方法により決議することとした事項」
 組合を法人化する場合も4分の3が必要でした。

○判例F……「規約変更の決議をするに当たり、賛成者が区分所有者の4分の3の多数に達していなかったとして、規約の変更は無効であるとした事例」(東京地裁H5.2.26判決)があります。

○判例G……「店舗部分の管理費の負担が従来は住居用部分よりも比較的定額であったところ、専有部分の面積を基準とするように規約を変更し、さらに集会の決議で具体的金額を決めた結果、店舗部分の管理費が増額されたことについて、この規約の変更はその区分所有者に不利益な内容ではあるが、特別の影響を及ぼすものではないとし、規約の変更を有効とした事例(東京地裁H5.3.30判決)があります。

○判例H……「飲食業を禁止することとした規約の改正は、特定の区分所有者に特別の影響を及ぼすときに当たらないので、その承諾は必要ではないとした事例」(福岡地裁小倉支部H6.4.5判決)があります。
ポイント8 審議は「提案」「質疑」「討論」「採決」の順とすること
 時間の節約の必要があれば。と言うことで通常、時間は余るくらいはあるでしょうから、討論で賛成反対を言いたい人があれば、じっくり聞いてあげてください。

 世間話をしているわけではなくて、何か決めようとしているわけですから、ここをきちんと議長さんは認識しておかなくてはいけません。まず提案で始まって、採決まで、自分はこういう順番で、採決まで行かなければいけないんだということを常に意識していなければなりません。

 ここが議長さんの大変なところです。ここだけは心得ておかなければいけないのです。意見を長々言う人に対しても、ご意見は良く分かりましたからと、そこで討論打ち切りと言う議事進行を、議長としてはおやりになられて良い。遠慮することはありません。
ポイント9 議長は採決の結果を示すこと
 これは、どれくらい賛成者がいるのか反対者がいるのかで臨機応変にやらなければいけません。反対者がいないと分かっている場合、ご意見ありませんかと言ってもしんと黙っている場合、別に反対しているわけではないのですね。結論はどうなったかは口に出して言わなければなりません。それは議長の役目ですからね。
「賛成○名、反対○名、保留○名と認めます。」
「全員一致と認めます。」「賛成多数と認めます。」「第○号議案は可決されました。」とはっきり言ってください。
ポイント10 議事録を作成すること
 規約49条1項、2項
「総会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。」

 理事長さんにとっては多少大変だと思うのは、ポイント8の審議の経過をきちんと示すことと、ポイント9の採決の結果をきちんと示すことです。
▼講演後会場での質疑応答
杉本理事長       中島弁護士
 議長さんとしての気苦労はそのくらいしかないと思いますので、そこさえやれば、議長は務まるのだと安心していただいて、率先して議長をおやりいただきたいと思います。


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