「建物の将来の危険性」も基本的な安全性を損なう瑕疵
最高裁 別府マンション事件福岡高裁判決を破棄

 最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は、平成23年7月23日、別府マンション事件福岡高裁判決(福管連だより第162号2009.3.1)を破棄し、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵には、放置すれば居住者等の生命、身体又は財産に対する危険を現実化することになる瑕疵も含まれる」として、福岡高裁に差し戻し、さらに審理を尽くすように命じました。

 別府マンション事件とは、別府市にある9階建のマンションで、廊下やバルコニーにひび割れや手すりのぐらつき、鉄筋不足など、多くの欠陥があったとして、設計監理者と施工業者に対して3億5千万円の損害賠償を求めた事件です。大分地裁は約7,000万円の支払を命じましたが、福岡高裁は損害賠償を認めませんでした。上告審の最高裁では、「基本的な安全性を欠く建物の設計監理をした者や施工業者には責任がある」として高裁にやり直しを命じたのです。

「現実的な危険性がない限り欠陥マンションではない」福岡高裁
 福岡高裁(石井宏治裁判長)は、前回の差戻し審で「このマンションを第三者に売却してから6年以上経過しても、何ら現実の事故が発生していないから、建物としての基本的安全性を損なう瑕疵」ではないとして、原告全面敗訴の判決を出しました。換言すれば、「誰かが怪我をしたり、死なない限り安全性を損なう瑕疵とは認められない」というような判決です。これを不服とした原告は、福岡の幸田雅弘弁護士、矢野間浩司弁護士を代理人として、再び最高裁へ上告し、今回の判決になったのです。
シックハウスやアスベストの被害も視野にいれた判決
 最高裁の判決は、「建物の構造耐力にかかわらない瑕疵であっても、これを放置した場合に、例えば、外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落するなどして人身被害につながる危険があるときや、漏水、有害物質の発生等による建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。」と述べています。さらに、「有害物質の発生で健康や財産が損なわれる危険」も「基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」と述べている点は、シックハウスやアスベストの被害も視野にいれた判決ではないでしょうか。


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