福管連セミナー講義録
マンショントラブル事例とその解決法

マンション管理士  三井 一征

 マンションをめぐる紛争を大まかに8つに分類いたしました。全部には触れられませんが、要所要所で例を挙げながらお話していきます。

1:マンションの建築をめぐる問題
4つほど大きなテーマがあります。
  1. 既存不適格建築物
    建築したときは、建築基準法などの法令に適していたのですが、その後の法律や条令の改正によって、今の制度にあわなくなった建築物のことです。これとよく似た違うものとして違反建築物があり、これは現在の法律に違反して建てられたものであって認められません。既存不適格建築物は、建て替えだとか、更地処分、修繕による長命化、そのうちのどれかを選ぶ時期がやってきます。その時に大きな問題になります。
  2. 等価交換方式
  3. 新築瑕疵
    (民法上の瑕疵の問題、宅建業法上の瑕疵の問題、品格法):構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の2点については10年以上の保証で、私たちの大金を払った財産を守る手段ができました。
  4. 基本資料の散逸
2:売買をめぐる問題
  1. 重要事項の説明
  2. 不衡平な原始規約の設定
    (あるという事を覚えておいてください。)
3:マンションの管理体制
  1. 管理組合がない:法律上は当然管理する団体は存在しているのですけれども、管理組合を名乗った団体がない。(福岡あたりではないと思います。)
  2. 管理組合の法人化:ここは重要。
    区分所有者が2人以上いれば、管理組合法人ができるようになりました。
  3. 規約の設定・変更:皆さんのマンションの規約が何時のものなのかを調べておく必要があると思います。
  4. 総会・理事会の運営
  5. 管理者の当事者適格が上がっております。
4:財務
  1. 管理費等の負担割合
  2. 管理費等の滞納の問題
  3. 管理費等の収納・保管・会計の問題
    この3つが絡んでおります。
    今回最高裁の判例が出ましたが、マンションに住んでいる人よりも管理費等を高くする住民活動協力金というのは法にあっていますよという判決でした。随分長い間裁判で争われてきましたが、もうこれ以上ひっくり返ることは当分ありません。
    滞納については表をご覧ください。
5:日常生活をめぐる紛争
  1. 専有部分と共用部分の分界点…雑排水管の帰属等。スラブを抜けて下階天井裏を通る配管に限っては、スラブから先を共用部分とみなして扱っております。
  2. 規約・細則の不備等
  3. 共用部分の変更:管理規約とそのコメントを見て頂くと良いでしょう。特別決議が良いか、普通決議で良いか、違いについてはしっかり押さえておいて頂きたいと思います。

    滞  納

    少額訴訟制度

    支払督促

    訴訟

    先取特権の実行
    滞納額 60万円以下 制約なし 制約なし 制約なし
    管轄 滞納者の住所を管轄する簡裁(同一簡裁で1年間に10回以内) 滞納者の住所を管轄する簡裁 規約に定める合意管轄裁判所(140万円までは簡裁) マンションの所在地を管轄する地裁
    被告の選択権 最初の裁判の日に言い分を主張するまでは、通常訴訟を選択できる 異議申立があれば、通常訴訟に移行する なし なし
    行方不明 利用できない 利用できない 利用できる 利用できる
    議決方法 普通決議 普通決議 普通決議 普通決議
      規約の定めがあれば理事会決議 規約の定めがあれば理事会決議 規約の定めがあれば理事会決議 規約の定めがあれば理事会決議
    強制執行手続 必要 必要 必要 不要

  4. 駐車場の専用使用権:現在一番多いのは賃貸型です。管理組合が個々の区分所有者に貸している。これが一番多いかたちです。
  5. 動物の飼育:禁止規定があるのに2割前後が飼われているのが一般的な姿です。
    (例)使用細則は禁止事項のまま変更しない。特例として、現に飼育されている犬猫一代限りの容認。ただし管理組合に登録義務。新規飼育は認めない。飼育者全員でペットクラブを組織。不良飼育者に対しては飼育許可取消と共に駐車場使用契約の解除等の措置。クラブの代表者による1年毎の経過報告すること等を決めた。
  6. 生活騒音
    問題点1仮に「加害者」と呼ぶ居住者が使用している物の材質・仕様等とその行動様式
    問題点その音を伝播する建物・設備の構造、部材の材質・仕様等
    問題点仮に「被害者」と呼ぶ居住者の感受性と行動様式。
    客観的に明らかな騒音もあれば、主観の応酬になるものもあります。どのレベルの人も等しく尊重されるべきだけれど、マンションという集合住宅においては、与えられた条件の中で共生するしか方法がないという宿命を持っています。
  7. 漏水・落下物等…個人賠償責任保険をかけることも
    共用部分に起因する事故は、管理組合がその責任と負担においてその原因箇所の修繕、被害箇所の原状回復を行わなければなりません。
    2項 第7条(専有部分の範囲)に定める専有部分に起因する漏水等の事故については、当該専有部分の区分所有者又は占有者(以下この条において「加害者」という。)が、その責任と負担において、原因箇所の修繕及び被害箇所の原状復旧を行わなければなりません。ただし、管理組合が付保する損害保険が適用される場合には、その受領保険金を当該原状復旧工事費に充当するものとします。
    3項 原因箇所の修繕及び被害箇所の原状復旧を加害者が速やかに行わない場合には、理事長は、理事会の決議により代執行し、その費用を加害者に負担させることができます。
    4項 漏水等の事件の原因が不明な場合には、その原因が共用部分の設置、又は保存の瑕疵にあるものと推定します。ただし、その原因が専有部分にあることが判明した場合は、加害者は、第2項の規定に従わなければなりません。
    損害保険については、きちんと手当てをすることが重要です。
  8. 判断力の減退・喪失…成年後見制度
  9. いわゆる心の病
6:マンションの補修・復旧・建て替えをめぐる紛争
 これはまたの機会にお話しましょう。
7:不良入居者・義務違反者との紛争
賃借人等の当該第三者の義務違反行為によって生ずる損害賠償及び紛争処理等については、当該区分所有者は連帯してその責めに任じなければなりません。これは専門的な議論はありますが、とにかく謳っておこうということです。
8:管理委託をめぐる紛争
管理会社の業務内容なのですが、標準管理委託契約書がついこの間書き換えられましたけれども、第11条に有害行為の中止要求というのがあります。義務違反行為をやっている区分所有者や占有者の方々に対して、管理会社がとことん辞めさせることをしないが、どうすれば彼らはそうやってくれるのでしょうという相談をしにこられる方々には、この委託契約書のここをご覧いただきますので、ここを読んで終わりとします。
乙(管理会社)は、管理事務を行うために必要なときは、甲(組合員)の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。

一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
二 建物の保存に有害な行為
三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為
四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
五 組合員の共同の利益に反する行為
六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
2 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しないときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものとする。

管理会社の業務内容―2
標準管理委託契約書
「別表第1 事務管理業務(2)出納(2)管理費等滞納者に対する督促」
一 (省略)
二 甲の組合員が管理費等を滞納した時は、支払い期限後○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払いの督促を行う。
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。


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