マンション再生法(仮称)の提案
NPO法人福岡マンション管理組合連合会
理事長 杉本 典夫
I.全管連代表者会議において決議

 福管連も加盟しているNPO法人全国マンション管理組合連合会(全管連)は、平成22年4月19日、名古屋市で開催された第60回代表者会議において、専門委員会で検討し、取りまとめた「マンション再生法(仮称)」を承認し、今後、立法化に向けて全国的に活動を展開していくことを全会一致で可決しました。

II.提案の背景

 わが国の戦後の住宅政策は、量的増加に始まって、持ち家政策、居住面積拡大、設備容量増など新築住宅の量的拡大・質的向上を中心に展開されてきました。
 マンションについても、区分所有法の建替え要件緩和、建替え円滑化法制定、新築中心の長期優良住宅促進法制定など「新築と建替え」を中心とする施策がとられてきました。

▲認定長期優良住宅サンリヤン別府シールズ  しかし、国土交通省の資料によりますと、平成21年末現在で、全国の分譲マンションストック戸数は、約562万戸、居住人口は、約1400万人達しています。

 このうち、築30年以上は73万戸ですが、築20年以上に拡げますと、185万戸、全体の3割にも達します。ということは、10年後は、マンションの3割が30年以上経過していることになるのです。
 この長経年化したマンションに対しては、建替えをすべて否定するものではありませんが、大規模改修工事を含め長寿命化を図る諸施策を中心として推進する以外に途はないのではないでしょうか。

 全管連は、このような状況を踏まえて、必須な法制度整備の一環として「マンション再生法(仮称)」の立法化を提言するものです。
III.マンション再生法の概要
  1. マンション再生法の目的 
     マンション再生法は、既存マンションについて、適正な維持管理を図るとともに、社会的なニーズや生活スタイルに応じた再生を行い、より長寿命化を図ることを目的とします。この場合、「再生」とは、主要な構造体を残しながら、その時代の住生活のニーズ等に合わせ、部分的な改善・改良、設備の更新等を行うことです。また、「長寿命化」とは、長期修繕計画に基づき大規模改修工事を繰り返しながら、より長期にわたり住めるようにすることをいい、長期とは、築後概ね100年以上(住めること)をいいます。
  2. 再生のレベル 
     ストックに求められる水準は「部分的向上」です。目標は、長期間にわたって使用可能で、かつ、省エネルギーに貢献することです。再生対象の部位や再生レベルは、マンションの現状、条件により段階があるので、必ずしも、一律の基準を前提とせず、それぞれの対象物ごとに、幅のある基準を設定します。
  3. 再生の具体的基準
    (1)劣化対策・・・2〜3世代にわたる長寿命化ができるよう適正な維持保全を行う。
    (2)耐震化・・・旧耐震構造は現在より上位の耐震性を得ることにより、新耐震構造またはそれに近い耐震性の確保を目指す。
    (3)内装・設備を更新することで、住生活水準の向上を目指す。
    (4)可変性化、バリアフリー化、省エネルギー化、住居面積増の基準は、既存のマンションでは一挙に高レベルの水準にすることは不可能なので、部分的変更も可能とし、段階的水準を設けるものとする。
    (5)過剰な住戸の減築、2戸1化による居住面積増、使用目的の変更等についても、広くマンション再生の対象とし、それぞれの内容に対応した措置を講ずるものとする。

    (注)再生は、形成された既存のコミュニティを解消することなく、継続させながら住居・住宅地の居住水準向上に繋がるものであることが重要なポイントです。既存の建物には、既存不適格や階段幅員に見られるように、再生を行うに当たり、建築基準法や消防法等に抵触するものもあるので、再生に当たっては、現行法上の緩和策が不可欠です。
IV.再生事例
  1. 部分的再生の取組み−階段室型団地の問題点−     
     部分的な再生の取組みとして、バリアフリー化とくにエレベーターの設置が重要ですが、階段室型団地では、階段室の踊り場に着床し、半階上下しなければ玄関にアクセスできない問題あり、かつ、多額の費用を要するため、民間では実施困難です。
     当面は、共用部分のスロープ化や廊下・階段室等への手摺り設置等が主な対策となっています。 
      
     その他、耐震性能向上、サッシの二重化、玄関扉更改、太陽光パネル設置、電気幹線容量増、情報回線の光ケーブル化等の施策は一部補助制度も設けられています。さらに、2戸1化、減築、バルコニー室内化、建物外周高断熱化、建物利用目的変更(コンパージョン)、上下住戸の階段設置メゾネット化、管理室・玄関ホール・ピロティの集会室化等の事例があります。

    ▲団地 階段室型エレベーター

  2. 再生マンション「リベラほうしょう」の事例
     愛知県武豊町にある賃貸マンション「リベラほうしょう」は、築22年31戸の賃貸マンションを改修。
     青木茂建築工房設計、岩部建設施工。建物の躯体だけを残した状態で解体し、耐震補強や柱や梁の補修、増築、外装、間取りの変更等を実施し、28戸として再生。

    ▲再生マンション「リベラほうしょう」

  3. 「ひばりが丘団地」の本格的再生試験工事      
     URでは、東京都東久米市に日本住宅公団(当時)が建設した180棟2700戸の団地(築50年)のうち、3棟を床スラブや戸境壁を取り壊して、複数戸を1戸にまとめる2戸1化や最上階の住戸を撤去する“減築”など、基本構造に手を加える本格的な再生工事の試験を実施しています。対象の3棟は、いずれも4階建て「階段室型」計80戸で、すべて面積35平方メートル、2DKという典型的な団地タイプです。改修項目は、住戸面積の拡張、バリアフリー化などから、遮音性や断熱性といった基本性能に関するものまで多岐にわたっており、再生時代の幕開けを象徴する工事といえます。


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