滞納管理費回収の基本
平成21年10月31日に開催しました福管連マンションセミナ−における弁護士中島繁樹先生の講演は、管理費回収に非常に参考になりますので、内容の一部を紹介します。
当日の中島繁樹先生の講演内容は、その全部をDVDに編集して、近く発売しますので、ご期待ください。

講師 中島法律事務所 弁護士 中島 繁樹
I. 管理費の滞納を防ぐ三つの重要な方策
 滞納管理費を請求することは、本当に大変な作業です。なんだかんだといって払わない人がいますから・・・。できれば、滞納が起きないように、前もって、可能な限りの手当てをしておくことが大切です。
 滞納を防ぐ方策として、次の三つが重要です。

第一 遅延損害金14.6%は、必ず徴収しよう!
まず第一は、管理規約の中に「遅延損害金」の支払義務を明記することです。滞納すれば、何%の遅延損害金を払ってもらうと定めます。遅延損害金の率は、管理組合の自主性に任されていますので、10%でも20%でもよいのですが、これから決めるのであれば「14.6%」とされることをお勧めします。

 何故かといいますと、平成13年に施行された消費者契約法で、一般の消費者の遅延損害金(違約金)のうち14.6%を超える部分は無効と定められていますので、無用のトラブルを起こさないためにその範囲内とすることが賢明です。

 その代りといってはなんですが、遅延損害金(14.6%)は必ず払ってもらうとの姿勢を明確にしましょう。そうしますと、利息を払ってまで滞納しようとする人は、少なくなるでしょう。遅延損害金の徴収を励行したところ、滞納がなくなった管理組合もあります。

第二 弁護士費用の滞納者負担
 管理回収の法的措置を弁護士に頼む以上は、着手金や報酬金といった費用がかかるわけですが、そういう費用はすべて滞納した人が負担するものと管理規約に明記してください。

 そこまでの費用がかかるのであれば、管理費を払おうということになり、管理費の滞納を防ぐ強力な方策になります。

第三 滞納管理費を賃借人に負担させる方法
 賃借人は区分所有者ではないので、管理費の支払義務がないのは当然です。しかし、それは管理規約で変えようと思えば変えられます。どういう変え方をするかは、福管連のモデル規約の中にも出ていますが、賃借人がマンションに入居するときに一筆書いてもらうのです。

 貸主である区分所有者と新しい借主である賃借人の連名で「もし、貸主が管理費等を滞納した場合は、賃借人が毎月の家賃の中から、貸主に代位して、直接、管理組合に支払う。」旨の誓約書を提出してもらうのです。管理規約の中に、そのような誓約書の提出を義務付ける規定を設けます。

 そのような一筆が入っていますと、賃借人は、管理費と修繕積立金について、保証の責任が生じてくるわけです。管理組合は、その責任を追及すれば足ります。

II. 管理費滞納に対して給水を止めることができるか?
 水道局はマンションの親メータ−だけを検針し、管理組合が水道料を一括支払っている、いわゆる一括検針方式の場合に管理組合は、区分所有者の管理費滞納に対して、その住戸への給水を止めることができるかどうか。

 管理費滞納くらいで水を止めてはいけない、と多くの弁護士は考えているようであり、給水停止は人権侵害ではないか、との専門家の意見も強い。
 しかし、ご承知のように、多くの管理組合は給水を止め、止めると水道料が支払われるといった実態があります。そうであれば 結論として給水停止は断固やるしかないが、慎重にやる必要があります。
 そういう意味で、慎重に給水を停止するための三つの要件を次に挙げることにします。

第一 給水停止が管理規約に書いてあること
 「管理費滞納の場合は給水を停止する」と管理規約に書いてあることが必要です。書いてないのに勝手に止めると、どういう根拠で止めたかといわれます。規約の書き方は、福管連のモデル規約に入っていますので、それを採用したうえで実行してください。実際にそのような規約を定めている管理組合は、沢山あります。

第二 給水停止には「やむをえない事情」が必要
給水停止には「やむをえない事情」が必要です。「管理費を払わないことが、やむを得ない事情」とはなりません。裁判所に持ち出されて、裁判官から、「給水停止はやり過ぎで違法だ」といわれないためには、次の二つの要件を充たさなければなりません。
1 管理費滞納だけでなく、水道料の滞納も一緒に発生していること
水道料の滞納も発生していることが、「やむを得ない事情」のほぼ決定的な要件です。
すなわち、水道料金を一括徴収している場合は、給水を止めない限り管理組合の被害 の拡大を止めることはできないからです。管理費の滞納だけでは無理です。

2 滞納者が支払について真面目に対応しないこと
督促状を送っても何の返事もない、面談して、分割してでも払ってもらえないかといっても、いつものらりくらりで理由もいわずに応じない、あるいは行方さえ不明で連絡がつかない、といった債務者側の誠意のない、不真面目な態度がやむをえない事情です。

第三 給水停止の程度及び止め方にも配慮すること
1 給水を停止する場合には、まず警告する必要がある
理事会で給水停止を決定し、いついつまでに支払がないときは給水を停止するという警告の文書を出します。予告期間は、2〜3日でなく1週間から10日は必要です。

2 水は完全に止めないで半分か3分の1は出るようにしておく
水の止め方ですが、完全に固く締めて水が一滴も出ないようにはしない方が良い。飲み水や朝起きて顔を洗い、歯を磨き、ご飯を炊く程度の水は使えるようにします。トイレや風呂には足りないが、それは、共用水栓の水を有料で提供し、運び上げてもらう。

3 乱暴な止め方はしない−裁判官の心証形成に影響−
針金でぐるぐる巻きするなどは好ましくなく、閉栓キャップで止めるのが穏当です。


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