「現実的な危険性がない限り欠陥マンションではない」
− 人命尊重・消費者保護に逆行した 別府マンション事件 福岡高裁判決 −

 福岡高裁では、別府市のマンション欠陥事件について、「設計監理者、施工業者は、建物購入者と直接契約関係にないから賠償責任を負わない」とする判決を出しましたが、最高裁で破棄され、やり直しを命ぜられていました。最高裁では「基本的な安全性を欠く建物の設計監理をした者や施工業者には不法行為責任がある」として差し戻したのです。

 この差戻審判決が平成21年2月6日、福岡高等裁判所(石井宏治裁判長)で行われました。

 判決では、廊下やバルコニーの建物に平行した亀裂やその他のひび割れ、鉄筋露出、鉄筋・梁の耐力不足、手すりのぐらつきなどについて、すべて瑕疵として不法行為責任を否定するものでした。すなわち、最高裁のいう「建物の基本的安全性を損なう瑕疵」とは、「生命、身体、財産に現実的な危険性を生じさせる瑕疵」であると解釈し、本件建物は「建物としての安全性を損なう瑕疵はなかった。

 なぜなら、現実的に事故が発生していないから」というのです。換言すれば、誰かが、怪我をしたり、死なない限り安全性を損なう瑕疵は認められないといっているのです。人の「いのち」をなんと考えているのでしょう。


福岡高裁「6年たっても事故が発生していないから瑕疵はない」との単純な論理
 最高裁では、主要構造部でないバルコニー手すりの瑕疵であっても、これにより居住者等が通常の使用をしている際に転落するという、生命又は身体を危険にさらすような欠陥は「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」と判示しているのです。それを福岡高裁では「このマンションを第三者に売却してから6年以上経過しても、何ら現実の事故が発生していないから、建物としての基本的安全性を損なう瑕疵」はないとしています。

 しかし、偶然にも、欠陥のある部分には接触しなかったこともあり、事故が発生しない限り危険がない、 との論理は高裁の裁判官の論理としては単純すぎ、一般市民が納得できるものではありません。また、具体的部位に瑕疵がないとする判断も、例えば、バルコニーの建物に平行した亀裂は、専門家であれば、片持ち梁として、構造上の問題を疑うのが常識です。バルコニーが傾かなければ欠陥ではないとするのは、結論を先に出し、後で結論に合わせて理由をこじつけた感があります。

 最高裁の「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、福岡高裁でいう「現実的に危険性を生じさせる瑕疵」をいうのではなく、「安全性を損なう可能性がある瑕疵」をいうべきです。そうしないと、死傷者がでるまでは、瑕疵といえなくなります。

 人命尊重・消費者保護の時代の流れに逆行した福岡高裁判決です。当然、敗訴した原告側は、上告しました。


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