マンション管理の現状と今後の課題
■財団法人マンション管理センター
 主任研究員 廣田 信子

1 マンション管理の現状
 マンションストックは、ますます増加していますが、人口は減少し、高経年マンションが急増しています。

 住民が経年ともに高齢化するのに加えて、今までマンションに住んでいなかった高齢者が、子供の近くに住むためとか、病院が近い、車の運転ができなくても生活できるという理由で郊外の住宅を売却して都心マンションに住み替えるという事例も増えています。

 もともとコミュニティ活動が盛んなマンションであれば、新しいお友達ができてよいという面もありますが、新築のマンションで、若い人たちの中にぽつんと高齢者が入居し、孤立して引きこもってしまうという問題も起こっています。

 今後は、高齢化による管理組合活動の担い手不足への対応に加えて、高齢者をどう支えていくかということもマンションの課題になってきます。

2 マンション管理に関する新たな施策
  1. マンション管理の新たな管理方式の検討
     平成20年度、国土交通省では高齢化、賃貸化の進行に伴い、マンション管理の適正な維持管理が困難になることが予想されるため、理事会を中心とした現行の管理方式に加えて、新たな選択肢を整備する必要性、仕組み、条件等を調査検討し、その結果が20年4月公表されました。

     マンション管理の記事が一般紙一面に掲載されることはあまりないのですが、今回これが日経新聞の1面トップに出たものですから、大変話題になりました。

     中には、この記事を読み、これからマンションはプロが管理するから、もう理事会はいらないんだと誤解された読者の方もいらっしゃったようです。

     しかし4月発表された報告書には、「区分所有者の代表である理事長が管理者となる従来の管理方式が基本である。しかし、理事会としての意思決定が困難となり、適切な維持管理が行われなくなることもあるので、専門的知見を有する第三者を活用する管理方式を選択肢の一つとして検討する必要がある」と書いてあります。

     そして第三者の活用については、「区分所有者の無関心から第三者の恣意的な管理が行われることがないよう十分な配慮が必要だ」ともあります。

    たとえば、管理者管理方式を採用するためには、

    • 区分所有者、管理組合による管理者のチェックができるようなチェック機関を置く。
    • 慎重を期すため管理者の選任は特別決議とする一方で解任については迅速に対応できるよう普通決議とする。
    • 区分所有者による総会招集要件の緩和、名簿閲覧の保証、その他管理者の適格性や、管理者に対する行為規制、たとえば、設計図書、修繕履歴、契約書等の開示義務などの制度整備が必要ではないか。

    等が、今後の検討課題としてあげられています。

     また、「無関心な区分所有者や後期高齢者、フリーライダー(管理はただ乗りしようという確信犯的な人)等が大勢を占め、総会の成立すら危ぶまれるような、管理組合としての機能を失ったマンションについては管理者管理方式導入の意思決定すら困難なので、別途対応策が必要だ」と書かれています。

     その対応策として啓発活動を実施するとともに、管理組合が機能していないマンションの実態を把握することが必要になり、地方公共団体への期待が大きくなっています。マンション全件調査や押しかけ的なアドバイザー派遣制度を実施している公共団体も出てきました。

  2. 長期修繕計画の標準様式及びガイドラインの公表
     国土交通省は、平成20年6月に「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」を発表しました。

     既存マンションでは、25年の計画とし、「仮設工事」「調査・診断、設計・施工監理等費用」「長期修繕計画作成費用」も含めて19項目を設定しています。 また、修繕積立金は、「均等積立方式」で積立てるということが書かれています。
    長期修繕計画作成を依頼するときの指針として活用して下さい。

  3. 長期優良住宅の普及の推進
     「長期優良住宅の普及の推進に関する法律」が成立しました。これは「200年住宅」と言われるように、良い住宅を造って長期にわたって維持管理する仕組みを作ろうというものです。

     そのひとつである修繕履歴の整備については、マンションでは(財)マンション管理センターの「マンションみらいネット」が、先行していますが、戸建ても含めた「住宅履歴書」についての具体的な検討も始まりました。

3 管理組合が抱える問題
  1. 高齢化問題
     役員のなり手不足が一番の問題と言うアンケート結果が出ています。その理由としては、高齢化を挙げる管理組合が6割と多いのですが、本当に、これほど多くの管理組合で役員のなり手がなくて困っている状況なのかというと、そこは少し注意が必要だと思います。

     今まで管理組合活動を担ってきた方たちが、高齢になって後継者をと考えたとき、自分たちと全く同じレベルでの管理組合活動を求めていたのでは、若い人が尻込みしてしまうのもうなずけます。できないという先入観を捨て、一度は若い人に任せてみるということも必要ではないでしょうか。

     また、今後は、認知症になった高齢者の方にどう対応するかとか、孤立死を防ぐ独居高齢者の見守りなど、マンション住民の高齢化への対応もマンションの課題となってきます。

  2. 管理組合内部の紛争
     最近、管理組合の内部紛争が増えています。特に改修工事は大きなお金が絡んでくるので、トラブルになるケースが多いようです。

     理事長の知り合いの業者に工事をさせて困るとか、住民が知らない間にどんどん工事をしているとかいう問題は、それまで無関心で理事長に任せきりだった付けとも言えます。日頃から、組合員が関心を持ち、管理組合運営をチェックする体制が整っていれば防止できるトラブルも多いと感じます。

4 管理組合運営の危機管理の基本事項
 管理費・修繕積立金の管理が大変問題になっています。修繕積立金と管理費は区分して管理しなければいけないのですが、同じ通帳で管理しているところもあります。これは大変危険なことです。

 管理費と修繕積立金を同じ通帳で管理していると、いくら見かけ上は修繕積立金があったとしても、管理費が不足したとき、修繕積立金から立替えていくことになり、実際管理組合にある現金は少ないということになりかねません。また、近年、管理会社又は理事長が管理組合のお金を横領してしまう事件が多発しています。 

 このような事態から管理組合の財産を守るために、

  1. 口座の名義人は理事長になっているか

  2. 通帳印鑑は常に別々に管理しているか

  3. 大きなお金が動くときは、確かに先方に入金になったか確認しているか

  4. 通帳の記載内容を定期的に確認しているか

  5. 会計監査をきちんと行っているか

  6. 以上のようなルールを明文化し、総会で決議して、確実に運用しているか

 をチェックしてみてください。

 ルールが明確になっていないと、住民間で同じ住民を疑うのはいかがかという雰囲気も出てくる場合があるので、ルールは明文化しておくべきです。

5 管理会社との関係
 管理会社との関係は管理委託契約によるものなので、管理組合も当事者意識を持って、慎重に契約を結ぶことが大切だと思います。

6 コミュニティの意義
 管理組合の円滑な合意形成や、防犯、防災には、コミュニティの力が不可欠で、マンションの住みごこちにも影響します。

 良好なコミュニティがあるとは、居住者間であいさつや声かけが行われる状況が自然にできていて、多くの人がそこに住むことに安心感を持ち、同じマンションの仲間と仲良く暮らし、何かあったら助け合っていこうと思っている状態をいいます。大事なのは、日常のつながりで、必ずしも祭りなどの行事の有無ではありません。行事の実施は「つながり」づくりの場の提供のひとつと考えて下さい。

 まずは、身近な近隣が顔を合わせて言葉を交わせるちょっとした機会をつくることから初めてみてはいかがですか。

 また、責任が重く、楽しくなく、何かと責められるのでは活動するための人材が集まりません。これでは管理組合にとってマイナスです。

 管理組合の活動を出来るだけ楽しいものにするという発想の転換も必要ではないでしょうか。

 そのためには、

  • 専門家を積極的に活用して理事の精神的、時間的負担を軽減する。

  • 管理会社担当者、管理員さん、清掃員さん等マンション管理にかかわってくれている人に気持ちよく積極的に働いてもらえるように環境を整備する。

  • 組合員は役員さんに感謝するという気持ちを持ち、形に表す。

  • 何か問題があった場合、役員、組合員共に「責める」のではなく、前向きなコミュニケーションの取り方を心掛ける。

 こんな試みが効果的です。

今後は、コミュニティ力がマンションの価値の決め手になると思います。

フリートーク
  • ずっと同じ人が理事長をして、降りようとしない。
     ⇒ ひとつ上の名誉職を作って、頑張ってやってきたという気持ちと、まだ頑張ることができる気持ちをうまくくみ取ってあげる。

  • 理事にもならず、総会に参加もしない無関心な区分所有者に対しては、どうしたらよいか。なにかペナルティはないか。
    ⇒ 責めたり、強制してもあまり効果は出ないことが多い。なぜ理事がそこまでしなければならないかなんて考えないで、総会の委任状の提出がなければ、1軒1軒訪問する。それがコミュニケーションの機会にもなる。それを2〜3回繰り返すと、住民の意識が変わり、その次からは提出率が上がる。

  • 初めてマンションに入居したが、何をどうしたらよいかわからない。
    ⇒新しく入居した人が管理人さんなどに聞いて理事長さんにあいさつに行くということもよいが、新しく入居された方がいたら理事長さんが、その人を連れて居住者のところを回るということも有効。新入居者に小学生がいれば小学生がいるお宅を一緒に訪問するなど。


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