給排水管改修工事のポイント
建物診断設計事業協同組合
理 事 長  山 口 実
共用部分の保全

 メンテナンスがいかに重要かということをこの10年間で、日本人はいやでも学ぶことになるのではないか。
「インフラは健全な保全があって初めて成り立つ」のである。


錆について

 錆のことをお話したいのだが、何もかも全部錆びるということではない。継ぎ手にしても錆びやすいものと錆びにくいものがある。

 それでは錆びるとはどういうことなのか。白ガス管が錆びるというので、錆びない塩ビライニング鋼管が開発された。しかし錆は解消されなかった。錆びは「錆びる材料」が「錆びる環境」にあるときに発生する。

 赤水は日本独特の問題である。ヨーロッパやアメリカでは硬水といって水分の中にカリウムとかカルシウムとかが、かなり入っていて、それで内側に膜が出来てそれが錆を抑える。

 それに対して日本の水は軟水だから、とても美味しいし使いやすい。しかし、軟水であるがために、管の内側にそのような幕が出来ないのである。先進国の中では珍しい現象だ。このような事情があったので、メッキしていても錆びる状態であった。もう1つには塩素がだんだん強くなる。これも影響していると言えるかもしれない。


 そこで塩ビラインニングの登場だが、これは鋼管の内側に塩ビをライニングする方法である。民間でも1970年代半ばには取り入れられるようになった。
しかしまた新たな問題が発生した。塩ビライニング管の継ぎ手の部分が錆びるのである。

 管はライニングされているけれど、継ぎ手はそのままだったということである。74年に内部を樹脂コーティングしたものが出たが、マンションでの採用はまちまちであった。しかもそれを使ってもまだ解決しなかったのである。管をコーティングし、継ぎ手をコーティングしたにもかかわらず、何で解決しなかったのだろうか。
 その原因は、螺子の先端の部分が水に接触すると、その部分が錆び瘤になり、内側に捲れてくるのである。塩ビライニング鋼管の錆びはほとんどこれだろうと思う。そういうことであれば「継ぎ手が多いところは錆びる。」と言うことになる。

 1990年頃からその先端部分にパッキンを入れるようなものが出てきて、やっと錆がなくなった。その結果、1990年代前後からガラッと変わってきた。

 給水管の取替えを計画しておられるマンションに伺い、給水管の診断をするときは、まず抜管し、サンプリングして、その部分がこんなに錆びているのだという説明をすることにしている。

 全体が腐食するのではないということと、継ぎ手部分の多いところや異種金属接合部が当然錆びやすいことを説明し、結果として予算があまりないマンションには、錆びやすい部分を優先的に作業されるようご指導する。

 錆が一番多いのはメーターボックスの部分の接合部が多いところである。それから専有部分内では束口部分(蛇口を取り付ける部分)に銅の合金を使っていることが多く、当然そこが腐食しやすい。

建築物には個性がある

 それぞれのマンションの給水管は工法も材料も違う。社会的なニーズも時代で変化している。劣化具合もマンションによって異なるし、同じ材料・同じ設計で、同じように建てたとしても、水質が違っていたら錆び方はぜんぜん違ってくる。
それでは個々のマンションではどのようにすればよいかということになるが、まずは現状を知ることだ。現状を知るとは、システム・工法・材料・劣化具合・過去の事故や修繕の履歴を知ることである。だからこそ調査診断が大事だということになる


調査診断を先にやる

 いつも言うことだが、長期修繕計画通りに工事をやる必要はない。あれは机上論であるから、その前に自分のマンションの状態を調べてみよう。

 マンション管理センターで長期修繕計画の基の資料を作っているときに、委員会では「とにかく先に診断しよう。」とさかんに言い続けた。下手すると大規模修繕は、何年ごとにやらなければならないと思い込みがちになる。しかし、決してそうではない。長期修繕計画はあくまでも修繕積立金の根拠である。工事内容は診断をして現状を知ってからにしょう。

工事の優先順位
1.何が必要で、何が不要かを先に決めること
2.どの工事が必要なのかを考えること
3.関連性の検討

●設計監理者に対する理解と合意・資金繰り・段取り等の検討

●工法の検討
このときは管理組合の皆さんも加わっていただきたい。

●調査診断の結果・概算予算・過去の事故歴・区分所有者の要望・多様な工法の情報の中から選択しなければならない。
●施工条件
工事は住みながらやらなければならない。新築の場合と同じようにできるということにはならない。

●粉塵
床をはつるとか、壁をはつるとかするときには、とてつもない粉塵が舞うから、競争入札するのであればそのことも明確にしておかないと揉める元になる。

●改修工事も多彩多様

●ランニングコスト
忘れてはならないのは、工事が終了してからのランニングコストはどうなるかということである。これはかなり意識しておく必要がある。

●長期修繕計画
その工事が終わった時点で長期修繕計画を作ることである。やっと終わったのだからもういいじゃないかではなくて、この先何をすればいいかを把握しておくこと。

●更新工事
ある程度のメンテナンスは必要だとしても、30年間は大きな工事はやらなくても大丈夫だと言う原則を立てて、配管の工法や材料を選んできた。しかしこの場合にはイニシャルコストは当然上がる。

●掃除口
たとえば排水管の高圧洗浄をやるときに便利なように、掃除口を設けておくとよい。

●合意形成
築30年を経過したら更新工事を考える。このときに一緒に専有部分もやってしまう。専有部分の中の工事は配管の工事自体よりも復旧の工事費の方が高くなったりする。給水にしても、排水にしても、更新工事のときの最大のポイントは専有部分をやるかやらないかである。
やるとすればどういうルールでやるか、事前に討議しておく必要がある。

●工事の工法
工事の工法には、給水管更新工事、排水管更新工事があるが、やり方次第でかなりレベルも規模も違ってくる。
1.システム全体を変える。
2.システムは変更しないで、管・水槽・ポンプなどを更新する。
3.専有部分を含めた配管だけをやる。これが一番多いかなと思う。
排水管は専有部分で腐食していることが多い。特に台所系統に腐食が多いので、専有部分を含めた配管を取り替える工事が一番多い。
今回は延命工事で済ませようということになると、管理組合とサポートする側とがどこをどう落ち着かせるかという話合をする。

●システム変更
システム変更の例を1つ挙げれば、受水槽方式から直結方式への変換がある。
この場合はシステムの変更だけではなくて、水質の安全・水量の安定供給の責任が一義的に変わる。水質の汚濁とか止まった場合は管理組合の責任であるが、一義的には水道法の規定では水道局になる。これがシステム変更の背景にある。

●地下の受水槽
独立させるスペースがないところは、とにかく受水槽をなくしてしまおうとシステム変換する。ただどこのマンションでもできるということではないので、事前に水道局で調べる必要がある。

●直結方式
直結方式にも2種類ある。ポンプも何も使わない直結方式と増圧直結方式である。

●受水槽方式
受水槽方式のメリットは災害時における断水時にも貯留できることであり、デメリットは衛生的な管理が必要なこと、設置スペースがいること、清掃や検査に費用が掛かることである。

●直結方式のメリット・デメリット
直結の場合は貯留がないから、断水のときに影響がある。メリットは設置スペースや検査費用等がいらないことである。
ただ直結増圧の場合は、ポンプのメンテナンス費用などが掛かるので注意が必要。

●配管の選択の留意点
(1)経済性・耐久性・環境保全を考えて選択していただきたい。経済的にはイニシャルコストを考えるが、ぜひランニングコストも計算に入れて欲しい。

(2)イニシャルコストを安くしたかったら、工事をやり易くすることである。そのためには作業環境の整備が必要。
(3)以前の工法との関係も重要である。防水などでも違った選択をしていることがある。前回はこんなやり方だったのに今回の工法が違っているのはおかしいという様な事だ。

(4)環境保全とは居住環境を守ること。

(5)地球環境をぜひ考えていただきたい。

●安全性
1.防犯―泥棒が入ったりしないように居住者の安全性を考える。
2.利便性−なるべく日常の生活の弊害を少なくする。
断水等の配慮を怠らない。
3.施工性−工事のやりやすさが良い品質を生む。ぜひこれを認識して欲しい。

●配管材料の選択
配管材料の選択は重要なことだが、専門的過ぎてしまうためか論議されることが少ない。特に重要なのは継手の選択なのだが、情報も少なく「専門家」の視野も狭いのが現実だ。近年、改修工事向けの材料が多く登場しており、施工ミスが少なく、短時間の工事が可能なワンタッチ継手などが注目されている。

●漏水
台所の排水管の地中部分が折れたので、その排水管を直す工事をしたことがある。工事を始めようとすると水が出てきてしまう。そこで毎日作業の前に、午前中掛けて排水ポンプで管内の水を抜く。そして工事は毎日お昼からという状態が続いた。
●復旧費用
専有部分内の復旧費用のルールを明確にしておく必要がある。
排水管は空気との戦いである。台所系統が特に汚れやすい。耐震性、耐火性を考えて欲しい。先ほども言ったようにメンテナンス性を考えてほしい。どうせやるならここまで考えて欲しい。
●トラップ
空気との戦いとは何なのかよく分からないと思うが、トラップに水が溜まっている、便器に水が溜まっている、匂いがしないように、虫が上がってこないように水を溜めてある。
4.耐震性
配管をやるときに耐震性を考えてほしい。とめ方が非常に重要である。
5.最新情報
スラブから下のお宅に上の排水の音がするからいやだということで、消音に配慮した配管が開発された。露出配管でよく使う。

●ディスポーザーについて
維持がとても大変である。
ディスポーザーは壊れるものである。
ディスポーザーはゴミ箱ではない。流していけないものが沢山ある。金属・ガラス・貝・蟹の甲羅・大きな魚の骨・バナナの皮・スイカの皮・もちろん割り箸、ビニール・ラップはだめである。それから、天ぷら油や酸性・アルカリ洗剤もだめである。なぜだろうか。

ディスポーザー使用のマンションでは、流してはいけないもの等を、管理組合でもう一度確認をして、区分所有者に徹底しないと、制御計等の故障頻度が高くなる。
古くなると部品の確保が難しくなって、また新しいものを取り付けなければならなくなり、出費を余儀なくされる。便利はお金が掛かるものである。

●給排水管
給排水管がマンションの寿命に大きく関係がある。東京で建て替えの話になると、大体給排水管の腐食が原因のようだ。給排水管の取替えをしてマンションの寿命を延ばす努力をしよう。

一世代一住戸の考えは捨てることだ。我々の建物の寿命を伸ばすということはマンションの寿命が延びるということである。

そういう意味からも配管の取替えをやり、1世代で終わるなどという考えは捨てることだ。ヨーロッパでは既にやっていることだが、日本でも定着させたいと思っている。1世代1住戸の考えはもう古い。

配管が綺麗だと露出配管が出来る。スエーデンなどでは露出配管している。


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