屋上の携帯電話基地局場所の賃貸契約は全組合員の同意が必要
− 札幌地方裁判所 影響が大きい判決 −

 札幌地方裁判所(中山幾次郎裁判長)は、平成20年5月30日、S携帯電話会社が札幌市内のマンション管理組合に対し、屋上に携帯電話の基地局を設置するために締結した賃貸借契約に基づき行う設置工事の妨害禁止等を求めた裁判について、契約を締結するのに必要な区分所有者全員の同意を得ていないとして、これを棄却する判決を言い渡しました。

 J管理組合は、平成17年10月29日臨時総会を開催し、議案として、「S社の基地局設置について」を提案し、組合員総数77名のうち賛成59票(出席者9名、委任状20名、議決権行使書30名)により可決され、契約を締結しました。基地局設置に伴い使用料収入が年間約60万円見込まれ増収になるとの理由がありました。


裁判所の判断
 この契約は、マンションの建物の屋上の一部を、S社に平成17年11月15日から平成27年11月14日までの10年間賃貸する契約でした。そうして、S社が契約期間内に債務不履行があった場合、もっぱらS社側に責任があったに場合は管理組合が契約解除できるとの条項があり、それ以外に管理組合により解除ができることは定められていません。

基地局のための賃借権の設定は処分であり「共用部分の変更」ではない
 裁判所は、本件契約は、賃借権の設定という法律関係の形成と設備等を設置する物理的な変更があるとしました。そうして、区分所有法17条1項及び管理規約46条3項は、物理的な意味での変更のみを対象としており、法律関係の形成行為に同規定の適用はないとしています。

 もっとも、マンションの共用部分を対象とする長期間の賃借権の設定であっても、原状回復が容易である等、共有者たる区分所有者に与える影響が軽微である場合には、管理組合が管理行為として行うことができるとしています。

 本件の場合は、賃貸借契約期間も10年間と民法602条3号所定の期間の3倍にも及ぶ長期の契約であり、管理組合が契約期間内に契約を解除できるのはS社に債務不履行があった場合等に限定して途中解約はでき難い内容となっています。

 また、本件契約に基づいてS社が設置するアンテナや機械収容箱は、小さなものではなく、かつ、それなりの重量もあります。設置の過程で屋上のコンクリートにケミカルアンカーを打ち込むなど、物理的に本件建物の形状を変えることが予定され、アンテナは8メートルにも及び、本件設備等の設置によって建物の外観が変化することが予想されます。

 以上に加え、電磁波による人体への影響が科学的に裏付けられているかどうかはともかくとして、それを問題視して本件設備等の設置に反対する人間が一定数存在することは明らかであり、このような点からすると、本件設備等の存在が、各区分所有者が有する区分所有建物の市場価格に影響を与える可能性も否定できないといっています。

 これらの事情を総合して,本件契約の対象区域が、もっぱら屋上等の区分所有者の使用があまり予定されていない区域であることや屋上全体の面積からすると使用面積は広いといえないこと等の事情を考慮しても、本件契約による賃借権の設定や本件設備等の設置が区分所有者に与える影響が軽微であるということはできず、実質的にみて処分行為であるから、本件契約は無効であるとしています。

 携帯電話会社S社完敗の判決です。控訴していますが、基地局は全国の多くのマンションの屋上に設置されており、管理組合に与える影響も大きいものがあります。注視すべき判決です。


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