<判例探索> 理事長の助っ人になる判例の紹介(5)
○漏水事故調査に立ち入り拒絶した上階住人に損害賠償命令

 マンションに水漏れ事故はつきものです。少し古い事件ですが、その原因調査・修理のため室内立ち入りを求めたのに対して、これを拒絶した上階居住者に損害賠償責任が認められた判例を紹介します。

 大阪のマンション522号室に住むXの妻X2は、昭和52年5月29日午後3時半ごろ、炊事場天井から黒い水が垂れ落ちてきて次第に激しくなるので、直上階居住者Yの妻Y2に対して電話で、水漏れがあるので見に来てほしいと申し入れましたが、Y2は、水は使っていない、用があるなら管理員を通じてくれと怒鳴りつけるように電話を切りました。


病気を理由に立入り拒否・不当な要求

 当日は日曜日であったので翌31日に修理業者に来てもらいましたが、Y2は立入りを拒否しました。管理員にも依頼しましたが、Y2は病気を理由に立ち入りを断りました。

 その後、業者が、漏電のおそれもあるとして再三、Yに立入りを要求しましたが、網戸の張替え、風呂場天井の塗替え、床の塗替えなど7項目の要求を認めない限り入室は認めないと答えました。

 漏水発生3日後の6月2日にYはようやく立入りを認め修理を終えましたが、漏水の原因は給水管からの漏水でした。その後、522号室のXは、Yに対して、修理代343,000円と慰謝料700,000円合計1,043,600円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。


大阪地裁 不法行為と認定

 大阪地裁では、「同一マンションの直上、直下に居住するという共同関係をもって社会生活を営む者は、特段の事情がない限り義務として、漏水事故が生じた場合には業者の点検・修理のための立入りは受忍すべきである。

 Y2が病気としても立入りを拒否するほどの重症とは認められず、自宅の補修など筋違いの要求をし、立入りを拒否した行為は、違法性を帯び不法行為になる。」として、Yに修理代、慰謝料合わせて344,889円の支払いを命じました。

 ただし、慰謝料は70万円の要求に対して認められたのは7万円だけでした。それは、Xが立入りの交渉を管理員と業者に任せ過ぎたというのです。 


保存のための立入りは区分所有法に基づく行為

 区分所有法6条2項は、専有部分や共用部分を保存・改良する場合は、他の区分所有者の専有部分の使用を請求することができると定められていますから、本当は、このように裁判で争うことなく、マンション構造の特性を理解し、協力してもらいたいものです。(大阪地方裁判所 昭和54年9月28日判決)



Copyright(C)2007 PICT. All rights reserved.