認知症を知り、マンションでともに暮らすために

社団法人 認知症の人と家族の会
宮崎県支部世話人代表 吉村照代

 宮崎でもマンションを住まいとする高齢者が多くなってきた。便利のよい町の中のマンションが人気である。しかし、ドアを閉じると本当に外との交流はなく、孤独である。今では、一戸建ての家でも同じことが言えるかもしれないが・・・。

1、マンションでの実例

 マンションに住むある家族が、夫の認知症を近所に伝えることなく、認知症の夫を一人で留守番をさせ仕事に出かけていた。

 しかし、病状が進み、一人での留守番ができなくなり、介護サービスを受けることになった。

 たまたまケアマネージャーの人が同じマンションに住む方で、サービス以外にその方が見守り支援をしてくれることになり、安心して仕事に出かけられるようになった。

 このような状況になるのならもつと早く相談すればよかった、と後悔されたという話がある。

 介護保険サービスはいろいろあるが、それだけでは十分ではない。近所の支援で補われることが多い。

 マンションの中には、一人暮らしや老夫婦二人だけで暮らしている人がある。このような人たちは、年を重ね体の不自由さとともに生活もだんだんと不自由になってくる。

 このような人たちは、時に支援を拒む人もあるが、多くは声をかけてもらいたいと思っている。

 ドアを閉めてしまうと交流が閉ざされてしまうし、あけると今の社会のいろいろの事件に巻き込まれてしまう不安があり、とても住みにくい社会になってしまったが、このような社会だからこそ、近所の援助が必要だと思う。

 自治会の中で、一人暮らしや高齢世帯の支援のためのネットワークができ、その支援を受けながら、安心して生活ができるならば、認知症にもなりにくいし、早期の発見もされる。また認知症になっても安心して暮らせるのではないかと思う。

 ネットワークの中で、ある高齢者は、ごみの分類の方法が分からないため手伝いをしてもらっていると聞いた。でも一方では、ごみの分類を間違えて出し、近所に苦情を言われ困っている人もある。

2、認知症とは

 では、認知症とはどんなものだろうか。

1、記憶障害が起こる。

新しいことが覚えられない。病気の進行とともに新しい記憶から失われていく。

2、見当識障害

時間や場所、人間関係などが混乱する。季節が分からない。帰り道が分からない。

3、言葉を忘れる。言葉の意味が分からない。

4、麻痺はないのにうまく行為ができない。

5、感覚障害はないのに暑い、冷たい、甘い、辛いなど正しく認識できない。

6、洗濯、炊事など今までできていたことができなくなる。

 以上6つの症状に伴い適切な支援が行われないといわゆる問題行動といわれる症状がおこる。

 不安、何もしたくない、何も興味がない、自閉的、幻覚や妄想、迷子や徘徊、排泄の失敗や不潔な行為、暴言や暴力などである。

 また、認知症は、

1、身近で頼りにしている人に症状を表す。

2、だんだん若返る。(新しい記憶から失われるため)

3、エピソードの全部を忘れる。(ご飯を食べたことを忘れて食べてないという。)

4、まだらである。(健常な部分と、病気の部分が混在している。)

5、感情は残っている。(うれしい。悲しい。怖い。)

6、どんなに認知症が重度になってもプライドは残っている。

 このような特徴があるために、認知症の人はいろいろのトラブルを起こしたり、誤解されたり、だんだんと世間が住みにくくなっていくのである。

 認知症は病気である。『おかしいな、いつもと違うな』と思ったらまず病院へ行き受診しよう。

 認知症の人が時々、「わけがわからない。」「迷子になったみたい」「私は馬鹿になった。」と嘆かれるときがある。

 認知症になると何も分からなくなると思われていたが、それは間違いである。

 認知症の人は

1、迷っていること、分からないことなどさりげなくサポートしてほしい。

2、認知症でもできることがたくさんある。何もできない人と決め付けないでほしい。

3、急がせたり、できないことなど指摘してほしくない。

失敗をしからないで、失敗させないサポートをしてほしい。

4、一人の大人として普通に声掛けしてほしい。

と思っている。これを理解している周りの支援があれば安心して普通の生活を続けることができる。

3、地域社会でできること

 しかし、まだ家族ですら誤解していることもある、家族だから分からない部分もあるかもしれない。そのためにも、これからは認知症の人を地域で支えることが期待されてきている。

 2006年4月から、介護保険制度が大きく変わり、地域密着型サービスというサービスの体系ができた。これは地域の人と、サービスを提供する人が連携して認知症の人や高齢者を支える仕組みである。

 認知症の症状と、特徴を十分に理解し、同じ地域に住むものとして何ができるかを考えていきたい。

 認知症の人をかかえている家族は、片時も目が離せない介護にとても緊張している。同じ話を何度も聞かされ「もう、いや」と思うときもある。しかし、「私は馬鹿になった」と嘆く姿に涙することもある。こんな家族の思いを支える近所があればどんなに気持ちが楽になるか分からない。

 家族の会では、全国のあちこちで家族の集いを行い、家族の思いを語り合う場を作っている。そしてそのような機会が大きな家族の支えになっている。しかし、認知症の人をかかえて、家族の集いに出席できない人もある。こんな人は、近所で支えてもらえたらどんなにありがたいことだろう。

 人はみな年を取り、もしかして認知症になり、必ず死んでいくもの。優しい気持ちで近所で支えあって暮らしたいものだ。


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