<新刊紹介>「マンション修繕・管理の実際」
− マンション修繕歴20年のベテランが説く −
○ 著 者  印藤 文夫(一級建築士・建築設備士)
○ 発 行  鹿島出版会(142ページ)
○ 定 価  2,000円(税別)



 著者は、(社)北海道マンション管理組合連合会の技術顧問です。顧問就任の1985年以降、マンションの建物診断を204件、設計監理を47件実施されたベテラン技術者です。

 まず、1989年(平成元年)以後、いわゆるバブル期以降に竣工したマンションの修繕工事費が大幅に増加していることを指摘しておられます。例えば、1990年竣工87戸のマンションの1戸当たり工事費が151万円とのことです。増加した理由は、追加工事が大幅に増えたためです。

 足場が組み上がり外壁の仕上げを剥いで見ると、各階コンクリートの水平打継ぎ部に砂利だけがあり、セメントがないいわゆる「豆板状コンクリート」が数多く発見され、その補修費が増えたのです。

 コンクリートの水分が多く柔らかいので、砂利だけが先に落ち、セメントと良く混和されていないので豆板ができるのです。マンションを60年もたせるために、第1回目の修繕時にこの補修をしっかりするので工事費が膨らんでいるとのことです。

 このように工事品質が低いマンション改修をどのように進めていけばよいかを具体的に(1)躯体コンクリート打継ぎ部、(2)タイル、(3)鉄筋、(4)アルミサッシ、(5)換気ダクト・フード、(6)バルコニー床・手摺、(7)屋上防水に分けて、点検・診断の仕方から修繕方法まで高い水準を維持しながらも具体的に説明しておられます。

 とくに外壁については、タイル以外はすべて可塑剤を含まない良質な「アクリルゴム塗料」を使った結果、極めてよい補修成果を得ることが出来たとしておられますが、著者の体験から生まれた貴重な持論とお見受けしました。

 繰り返し読むたびに、新しい発見が生まれます。管理組合修繕担当者だけではなく、設計監理者や施工担当者の方にも読んでもらいたい本です。

 最後に、「偽装設計と長期修繕」の項で次のとおり述べておられます。建設のベテランの教訓として、建設業関連の方々は肝に銘じてもらいたいものです。

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 「建物が出来上がり、それを買った人々の新しい人生が始まったというのに、一旦、大地震が発生したときは、倒壊を免れることが出来ないとは。そんな仕事を、誰が、なぜやったのであろうか。

 偽装を行った者が罰せられるのは当たり前として、彼らに構造設計を発注した元請設計事務所こそ責任重大である。

建築設計という行為は、常に理想と現実のはざまとの闘いに終始し、極めて高い倫理観を必要とする仕事なのである。」


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