身近な福祉の取り組み
市崎グリーンハイツ管理組合 前理事長 牧野 真澄 

高齢者見守りグループ

 2年間にわたるマンションの給排水管更新工事がようやく終わってほっとした昨年6月のある日、用事を済ませて帰宅する途中街角で同じマンションに住む2人の女性に出会った。

 病身の70代のAさんとAさんを“見守っている”80代のBさんだ。にこやかに話をしながらゆっくり歩く2人の姿は楽しそうで、「今日は良い風景を見た」と感じ心が和んだ。会釈をして自転車で通り過ぎたが、Aさんが大丈夫かと気になり引き返した。

 先日Aさん宅を訪れた時、心臓と肺に病を持つAさんは「数メートル先に物を取りに行っても息切れしてきついですよ」と話していたからだ。「散歩ですか」と声をかけたら「Bさんに誘い出されたんですよ。病院を退院した後外を歩くのは初めてです」と元気な声が返ってきたので安心した。

 市崎グリーンハイツには以前から高齢者の方々の見守りグループがあってBさんはそのメンバーだ。翌日Bさんに電話をしたら「500メートルほど離れた生協まで歩き15分間ほど買物をしました。店を出たらAさんがきつくなったと言うのでタクシーで帰りました。昨日の夕方と今朝様子を見に行きましたが元気そうでしたよ」とのことだった。

 Aさんは「刺身を買いました。退院した日に一緒に散歩しましょうと誘われていたので約束を果たしてほっとしました」と話していた。その頃はさわやかな笑顔を見せていたAさんは、再び入院し昨年8月に亡くなられた。マンションの多くの人が葬儀場でAさんにお別れをした。


改正規約に福祉項目を入れる

 市崎グリーンハイツは西鉄の平尾駅から歩いて12分の40世帯のマンションである。建設してからまる30年になり給排水管が古くなったことから、2002年から2か年をかけて給排水管を取り替える工事を7600万円で行った。共用部分と専有部分の工事を同時に行ったことから、工事は想像以上に複雑で難しいものになり各区分所有者の協力が鍵となった。

 この過程で「私は工事には反対だ。総会の決議 そんなもの私は知らないよ」という区分所有者もいて管理規約の中に「区分所有者は、総会と理事会の決議事項を誠実に遵守しなければならない」という条項を設ける必要があることを痛感した。また、高齢者だけの世帯が相当あり管理組合として、高齢化に伴う対応策を検討しなければならない時期にきていることも知っていた。

 国土交通省がマンション標準管理規約を改正するのに合わせて市崎グリーンハイツでも管理規約を30年ぶりに全面的に改正することにし、2003年12月規約委員会を発足させた。各階からそれぞれ1人、合わせて5人の委員を選び、それに理事長と建設委員長も加わった。福管連に管理規約改正業務を委託し作業を手伝ってもらった。

 まず第1章に「区分所有者は、円滑な共同生活を維持するためこの規約及び使用細則等並びに総会及び理事会の決議を誠実に遵守しなければならない」という遵守義務を入れた。

 また、管理組合業務の中に『福祉的な業務』を入れた。管理組合はどんな福祉的業務を行えるのか、また、どんな業務は行えないのかこれから検討していくことになるため、「区分所有者の高齢化に伴う管理組合として必要な福祉的な業務」という表現にした。

 規約改正の第1次案ができた段階で主な7つの項目についてのアンケート調査をした。このうち『福祉的な業務』については、ほとんどの組合員が賛成したものの一部の非居住区分所有者などに負担が増えるおそれがあるとして反対する意見もあった。

 まず『福祉的な業務』の具体的な内容について検討を進め、内容が決まった段階で予算を計上すべきだという意見もあった。こうしたことから予算の面では、具体的な福祉対策費用ではなく「本マンション居住者の福祉の検討に関する費用(高齢者、障害者対策)」を計上すると定めた。この規約改正案は2004年5月の臨時総会で討論し賛成多数で可決された。


住みよい「終の棲み家」づくりアンケート

 この後「住みよい終の棲み家づくり」アンケート調査をして、さらに区分所有者の意向を調べた。

●管理組合の業務の中に『福祉的な業務』を入れたことについて
 1)よかったと思う 67.5% 
 2)どちらともいえない 32.5% 
 3)よくなかった 0%

●平成16年度事業計画に
 「高齢化に伴う福祉対策の検討と計画作成」を入れていることについて

 1)よいと思う 73% 
 2)どちらともいえない 21.6% 
 3)よくない 5.4%

●いくつかの場で出た具体的な提案について
 イ 集合郵便受け箱が一部壊れ、又高くて届かない人がいるので作り変える
  1)作り変えに賛成 81% 
  2)どちらともいえない 16% 
  3)反対 3%

 ロ 今ある通用口のスロープは急なのでゆるやかに作り変える
  1)作り変えに賛成 70.3% 
  2)どちらともいえない 24.3% 
  3)反対 5.4%

●プライバシーに関することですが、よかったら答えてください
 イ あなたは市崎グリーンハイツを「終の棲み家」と考えますか
  1)そう考える 54% 
  2)まだ決めていない 27% 
  3)そのつもりはない 16.2% 
  無回答 2.7%

 ロ あなたは福祉的なボランティア活動に参加する意志がありますか
  1)参加する 13.5% 
  2)内容を検討した上で参加することもある 43.3%
  3)どちらともいえない 24.3% 
  4)そのつもりはない 16.2% 
  無回答 2.7%

以上二つのアンケート調査の結果は、管理組合が『福祉的な業務』を行うことに賛成する人が多数を占めるものの、業務の具体的内容や経済的負担などに懸念を持つ人も少なくないことを示している。管理組合では、このような懸念を持つ人達の意見を十分に聞き福祉業務の内容を決めていく必要がある。


身近な福祉の取り組み

 市崎グリーンハイツでは、昨年、桜を見る会や設立30周年・工事完了記念昼食会を開いたがこの席で集合郵便受箱や通用口のスロープについての要望が出された。このような自由に発言できる場を設けて意見を聞いたりアンケート調査を行ったりして区分所有者の意向を正確にとらえていくことが『福祉業務』を進めていく上で非常に大切だと思う。

市崎グリーンハイツでは、民生委員を務めている女性が中心になって7年前にふれあい訪問グループをつくり、1人暮らしの高齢者の見守りを続けている。3人の訪問委員がそれぞれペアを組み数人の高齢者を見守っている。互いに訪問しあって話をしたり買物の手伝いをしたり介護の相談にのったりするなど内容はさまざまだ。

 最初に紹介したように一緒に散歩に出かけるのも活動の一つである。グループの人は「見守りと声かけが原点です。みんな助け上手、助けられ上手にならなければ」という。市崎グリーンハイツではこのふれあい訪問グループの活動を基盤にしながら『福祉業務』を展開していくことになると思う。



Copyright(C)2004 PICT. All rights reserved.