区分所有法59条の競売は抵当権があっても可能
− 東京高裁「競売で抵当権は消滅する」との画期的決定 −

 東京高裁では、平成16年5月20日、「区分所有法59条に基づく競売は区分所有権の剥奪を目的とするものであるから、競売して抵当権者に優先弁済すれば剰余を生ずる見込みがない場合でも、競売を行うことができる」との決定をくだしました。


▼千葉地裁は競売を認めないとの決定
 千葉県内にあるマンションで、区分所有者が6年間に約50万円の管理費、修繕積立金等の滞納をしたために、管理組合は支払いを求めて提訴し勝訴の判決を得ました。しかし、依然として支払がないために、管理組合は滞納者の区分所有権等の競売請求の訴訟を起こし、平成15年2月に競売を認める判決を得ました。

 この判決に基づき、管理組合は区分所有権等の競売手続を行おうとしたところ、千葉地裁松戸支部では、「本件建物の最低売却価額は418万円であるのに対して、抵当権等優先する債権が2,788万円あるために、これを弁済すれば剰余を生ずる見込みがない」として、競売取消の決定をしました。つまり、競売を請求した者に何の配当もなく、無益な執行であるというのです。

▼競売をすれば担保権も消滅する
 管理組合は、区分所有法59条の競売請求は、剰余がなくても行うことができると主張して、東京高裁に取消しを求めました。東京高裁では、区分所有法59条の競売請求は、配当を求めて行うものではなく、共同生活の維持を図ることが困難なときに、当該区分所有者から区分所有権の剥奪を目的とするものであるから、優先債権を弁済して剰余を生ずる見込みがない場合であっても、競売手続を実施することができるとしました。そうして、この場合、区分所有権に設定されている担保権は競売することによって消滅する(いわゆる消除主義)と解するのが相当であるとしました。

▼競売ができなければ区分所有者全体の利益を害する
 消除主義をとった場合、担保権を有する債権者は、自分の意に反した時期に、その投資の不十分な回収を強要されるという事態が生じますが、東京高裁では「区分所有権は、区分所有法59条による競売請求を受ける可能性を持った権利であるから、もし競売といった事態が生じても、予想外のものではなく、区分所有権の内に潜んでいる制限が現実となったものに過ぎないので、債権者に不測の不利益を与えるものとはいえない」としています。逆に剰余がないからといって競売を実施することができないとすると、確定判決で競売請求が認められていることが実施できず、結果的に区分所有者全体の利益を害するものであるというのです。

▼画期的な決定と評価できる!
 区分所有法59条の競売請求は、通常暴力団が入居したときの追出しに使われることが多い条文です。滞納の場合、すぐ競売請求が認められるものではありません。訴訟で支払えとの判決が出ていてもなかなか支払わない悪質な場合とか、長期滞納の場合に認められるものです。

 しかし、競売請求が認められても、区分所有権に抵当権が設定してあるなど、別に多額の優先債権がある場合、競売手続をとれるかどうか見解が分かれていました。それを東京高裁では、きちんと競売もできるし、区分所有権に設定してある抵当権等の担保権も消えることを明確にした点は画期的な決定といえます。

▼今後の管理組合の対処方法は
 福管連だより第104号(16.5.1)でお知らせしましたように、滞納管理費の時効は5年との最高裁の判決が出ました。これまで、時効に5年説と10年説がありましたが、今後は5年で確定したものとして進めていかざるを得ません。5年は、あっという間に過ぎてしまいます。管理組合としては、管理費等の滞納について、回収標準日程を決めて役員、管理会社協力のもとに実行していくことが第一です。

第二に、たとえ回収の見込みが薄くても少額訴訟や支払督促等では債権を確定させ、時効を10年に延ばすことが必要です。再三請求しても支払わない悪質なケースには今回の決定を受けて区分所有権の競売請求するといった手順で進めていくことです。その途が今回の決定により開けたものといえます。


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