最高裁 滞納管理費等の時効は5年の判決
− 無策で時効になれば役員の賠償責任も −

 最高裁第二小法廷では、さる4月23日管理費等請求事件で「管理費等は、定期給付債権として、5年間の消滅時効が適用される」との判断を示しました。

 埼玉県草加市内にある中古のマンションを買ったAが、前区分所有者が滞納した平成4年1月分から平成10年4月分までの管理費173万9920円を支払わなかったために、管理組合は、平成12年12月4日、Aに対して支払督促申立てを行い、これに対してAが督促異議を申し立てたので本件訴訟になったものです。
 第一審のさいたま地裁 越谷支部と第二審の東京高裁はいずれも、管理費等は一般の債権であり消滅時効は10年として管理組合の勝訴としました。

 これに対して最高裁では、管理費等は民法第169条に定める定期給付債権であり、その時効は5年と定められているとしました。したがって、支払督促申立てを行った平成12年12月から5年以上納期が経過している平成7年12月分以前の管理費等104万200円は、Aの主張に従い短期消滅時効となり支払わないでよいとして、残りの69万9720円の支払いを命じました。

 最高裁の考え方としては「管理費等は管理規約の規定に基づいて区分所有者に対して請求権が発生するものである。具体的金額は総会の決議によって確定するが、これは総会決議による基本権から派生する支分債権として民法第169条所定の定期給付債権に当たり、その請求権は5年間で消滅する」というものです。


立法措置を検討すべきとの補足意見も
 この判決に対して、3人の裁判官のうちの1人の福田 博 裁判官は、「管理費等に短期時効の適用がある点は、現行法の解釈として認めざるを得ない。しかし、将来の備えとしての修繕積立金は、資産価値を維持保全するために必要不可欠の負担であり、短期時効の適用により、不誠実な一部の滞納者がその納付義務を容易に免れる結果とならないようにするための適切な方策が立法措置を含め十分に検討されるべきものと考える」と補足意見を付しています。

管理組合の対処はどうすべきか
 滞納管理費の消滅時効について、最高裁は平成5年に5年間との判決を出しましたが、地裁・高裁では5年説と10年説が分かれていました。それが、今回の最高裁判決で5年説が確定したものといえます。
 この判決の評価は別として、管理組合では、管理費等の債権は5年間で消滅するとの前提で、事務処理を進めるべきです。

 滞納管理費があるにもかかわらず、何の対策も講じることなく5年経過し、滞納者から時効を主張(援用)された場合には、「無策で時効となった」として役員は善管注意義務違反(民法第644条)により組合員から損害賠償を請求されるおそれも出てきます。
 管理組合としては、未納の管理費等の回収業務をきちんと行うように、次の「未収納管理費回収業務標準日程」を規約化する必要があります。

未収納管理費回収業務標準日程
1 振替不納 銀行からの報告により、直ちに電話により通知する。
2 納期20日後 電話及び文書による納入督促
3 〃 40日後 訪問督促。駐車場使用契約解除予告
4 〃 60日後 配達証明付内容証明郵便送付
5 〃 80日後 駐車場使用契約の解除
6 〃 90日後 支払督促または少額訴訟

 また、法的措置は、総会を開催しないでも理事会承認で実施できるものとします。さらに、弁護士費用等法的措置に伴う費用はすべて滞納者負担とすることも規約に定めておきます。
そうして、誰が理事長になろうとも、標準日程に沿って淡々と回収業務を進めてください。

時 効 と は
 時効とは、平穏に続いている現在の社会秩序を維持するために、一定期間継続した事実状態を認め、権利をそれに合わせて変動させる法制度です。
 時効には、「消滅時効」と「取得時効」があります。消滅時効とは、一定期間権利を行使しない場合にその権利を消滅させる制度です。管理費等の滞納があっても、管理組合が長期間請求しなければその債権はこの時効によって消滅するのです。取得時効は、逆に、一定期間物を事実上支配占有していれば権利を取得したものとして認める制度です。
定期給付債権とは
 1年以内の一定の時期に定まった金銭を支払わせる債権は、「定期給付債権」として5年間権利を行使しないと消滅すると定められています。家賃や給料、年金などが定期給付債権に該当します。管理費等がこれに当たるかどうか争われたのが今回の事件です。


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