<マンション管理士活用事例報告>


大規模修繕工事に
マンション管理士を活用


浜川マンション管理士事務所
マンション管理士 浜川 皓
 マンション管理適正化法が平成13年8月1日から施行され、その法律の中心的な存在として「マンション管理士」が誕生しました。この工事事例は、そのマンション管理士を管理組合の立場にたった工事監督員として活用した珍しい事例と思われますので、皆様方の参考になればと思い、ここに報告する次第です。

I.大規模修繕工事におけるマンション管理士の役割
 私がある管理組合から相談を受けたのは、すでに大規模修繕工事の設計業務は終了し、見積り参加業者の選定を始めようとしている段階でした。
 相談内容は、(1)管理組合内に専門家がいないため今後の工事完了までの業務の進め方が分からない、(2)管理組合役員が多忙で毎日の工事チエックができない、(3)小規模なマンションなので監理費用をもっと合理化したいということでした。
今までの大規模修繕工事の多くは、管理を「信頼にたる業者に一切お任せする」という形(責任施工方式)で進められてきましたが、最近は、改修設計および監理は別の専門家に依頼する方式(設計監理方式)が増えてきました。その場合の工事チエックは、週に1〜2度が標準であり、監督員が常駐し、毎日、工事のチエックをする例は少ないように思われます。

 しかし、大規模修繕工事は、品質管理だけではありません。他に安全管理、工程管理、近隣問題、苦情処理、区分所有者の要望、設計変更等を管理組合と施工業者が共同で対応し解決するべき問題も多く発生します。これらの業務を、マンション管理士が管理組合の代理人として行ったところに、今回の事例の特徴があります。

 さらに外部の専門家に監理を委託する場合、監理料は、通常工事金額の5%〜10%程度は必要といわれ、管理組合の限られた修繕積立金を取り崩すことに抵抗感があります。
 このような管理組合の需要を満足させるために考え出したのが、マンション管理士を主軸として、1級建築士はポイントで検査等をお願いするという方式です。私はこれを「自主(管理士)方式」と呼ぶことにしました。自主(管理士)方式は、管理組合の立場に立ちながら、結果として施工業者の「より良いものを、より早く、より安く、より安全に」作るといった目的にも合致する工事監理方式です。

II.建物及び工事の概要

 今回依頼を受けたマンションは、築14年ですが、建物診断の結果、屋上アスファルトシングル葺き、庇、ベランダ等の防水機能の経年劣化を始め、外壁コンクリートの中性化が相当進んでいるなどの現象が見受けられるため、全面的な大規模修繕工事を行うこととなったものです。

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所在地: 福岡市
竣工年: 1990年(平成2年)2月(築14年)
棟 数: 1棟、3階、13戸   延面積:956.51m2
構 造: 鉄筋コンクリート造り(1階にピロティ部分駐車場)
工 期: 2003.9〜2003.11末
工事費: 12,700,000円(消費税別)(戸当たり97.7万円)
コンサルタント: マンション管理士・一級建築士(調査・診断・設計・監理)

 工事チエックは「3回以上/週」を基準としていましたが、実際は、毎日現場に顔を出し現場責任者と打ち合わせをしました。さらに、管理組合の役員の方々との数多くの打合せは、工事監督員としての役割だけでなく、マンション管理士としての業務であります管理組合の運営、その他のマンションの管理に関し、助言・指導・その他の援助を行うこともできたことを申し添えておきます。

 工事にあたっては、前の工程のチェックが終らなければ次の作業にかかることを認めない等のルールを定めました。また、工事写真や材料試験報告書等の書類チェックも行います。そのため豊富な修繕工事経験と専門的な知識並びに公正中立な姿勢が必要になります。ここに建築士とマンション管理士のタイアップの意義があります。しかし、このような工事監理こそが「塗装工事10年間保証書」等の裏付けとなるのです。

III.自主(管理士)方式のポイント
 自主(管理士)方式により、大規模修繕工事を計画し進めていく過程では、どの範疇がマンション管理士の業務で、どの範疇が設計事務所なのか、また、施工業者との接点はどこかをしっかりと定めておくことが重要と考えます。この事例では、工事完了時に管理組合より大変なお褒めをいただきました。また、施工業者からも、中立的な立場で適時に適切な指示があり工事がスムーズに進んだと、嬉しい評価を受けました。まだ1つの事例ではありますが、今後このようなケースが増えると思いますし、また、増えることを希望します。

 今回は、業者選定時点から協力させていただきましたが、できることなら、理事会での大規模修繕工事の発案の段階から、修繕委員会の設立、規約・資金の検討等にもマンション管理士として携われたら、もっとお役に立てたことと思います。


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