滞納管理費回収のポイント(2)
― 管理費請求の時効は何年か ―

中島法律事務所
弁護士  中島 繁樹

1 決着がつかない5年説と10年説

管理費が毎月毎月溜まり、5年10年と経ちますと、法律上、時効という問題が出てきます。裁判所は、時効は5年だという場合もありますし、10年だという場合もあります。 平成5年に、最高裁判所は管理費の時効は5年だという判決を出しました。それで決着がついたかというとそうではなく、その後も下級審つまり最高裁判所より下の裁判所では10年だという判決がいくつも出ています。
 最近に限っていうと、10年説がやや有利な状況ですが、最高裁が5年といったこともあるわけで、どちらといった決着はまだついていません。 それで、私の結論は、安全圏を考えて、どんなに滞納があっても、5年以内にはきちんと対処してくださいということです。5年を過ぎて裁判所に持ち出しても裁判所が救済してくれないことがあります。

2 時効は援用が必要

 私は、実際の裁判では、平然として10数年経った滞納金額でも全部を払えとの訴えを起こします。場合によっては5年に減らされるか、あるいは10年で済むかという問題はありますが、全額を請求します。 それはなぜかというと、時効というのは、裁判所は5年あるいは10年が経ったら、管理費回収にもう協力しないことがありますというだけのことだからです。時効になったからといって、請求しても咎められることはありません。裁判所に訴えを起こして請求することは何の問題もありません。
 13年分を訴訟で請求して、相手が時効だから5年分しか払わないと主張するときに初めて、裁判所は時効は何年という判決を出すのです。裁判で訴 えられた人が、5年だから10年だからといって反論する人は非常に少ないのです。相手に弁護士がついていてもそうです。弁護士さん自身があまり関心がないような気がします。
 相手側から時効だとの主張がなければ、裁判所は頭の中では分っていても、判決では一切考慮しません。これが法律の考え方です。これを時効の援用といいます。裁判手続上、時効は援用しなければ、裁判所はこれを考慮しないというのがルールです。

3 時効中断の二つの方法

   請求書を毎月送っていますから、時効は進まないのではないですかといわれる方がありますが、法律はそういう仕組みになっていません。毎月請求しようが5年10年の時効は変わりません。ただ、時効の直前になって、残り1週間では裁判を起こすゆとりが無いという場合、請求書を送れば半年だけ時効が伸びます。請求書を送れば、ぎりぎり時効期間プラス6ヶ月は期限のゆとりができる、これだけの話です。 時効を止めるためには、二つの方法しかありません。一つは裁判を起こすこと。そうしますと、裁判を起こした日に時効が止まります。行方不明者が出たり破産したりということで、すぐに取れそうもないときには、きちんと裁判を起こさないと、裁判所は一切助力しないという危険性が出てきます。
 時効を止めるもう一つは、承認という方法です。払わなければいけない人が払いますよといえば、それで時効が止まって、そこから5年10年の時効が始まります。ですから、どうしても払わない人には、管理費の滞納額の確認書を一筆書いてもらえばいいのです。請求して相手がなんだかんだといったら「じゃあ、とにかくこれだけ溜まっていることだけは確認してください。」と確認書の下にサインを貰えば、法律でいう承認にあたるわけです。承認した日から5年10年の時効が始まる仕組みになっています。


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