福管連案内

▼福管連の当面の取り組み−ADRと理事長派遣−
理事長 杉本 典夫

I.ADRについて

 ADRとは、英語のAlternative Dispute Resolutionの略称です。日本語では、裁判外紛争解決手続と訳されています。舌をかみそうな名前なので、通常ADRと言われております。

 このADR法は、司法改革の一環として誕生しました。われわれがトラブルに巻き込まれた場合、すべてを裁判所に持っていくのではなく、ほかの選択肢も設けて適切な解決を図ることができるようにしよう、というのがADR法制定の趣旨です。

 今までに弁護士会や土地家屋調査士会など22の団体がADRの認証を受けていまして、私どもは23番目として、平成20年12月24日に法務大臣の認証を受けました。初めて、一般市民により構成された草の根型のADR団体が認証を受けたのです。また、マンション管理の団体としても日本で初めての認証です。

 まず、福管連はなぜADRの認証を受けようと思い立ったかを申し上げます。福管連では、毎年2千件を超えるマンション関係の相談を受けていますが、これらの相談には、騒音、ペット飼育、滞納など組合内部の問題と建物の不具合、管理委託サービスなどマンションを巡る業者との問題があります。

 この相談について、今までは相談に来られた方だけにアドバイスをしてきましたが、さらに一歩進めて、相手方も同時に来ていただき、福管連が間に入って調停を行えば、より早く、相互に納得できる解決ができるのではないかと考えました。また、訴訟では、勝っても負けても相手との関係が悪くなるのが一般で、しこりが残り、他のことにまで対立関係が及び、業者との関係では契約解除にまで発展することもあります。

 しかし、ADRを利用して和解を図れば、お互いに納得の上の解決ですから、今後に持ち越すことはありません。このような理由から、福管連では、マンション問題解決業務についてADRの認証を受けようと思い立ったのです。

 当会のADR実施体制として、マンション問題解決センターという組織をつくりました。このセンターで、ADR、つまり調停を実施します。弁護士1名は必ず調停員になっていただき、ほかに一級建築士やマンション管理士等に入っていただくことにしております。

 ADRが裁判と違う点は、次の5点です。

 第一は非公開です。裁判は公開が原則ですから、プライバシーや企業秘密が漏れてしまう可能性がありますが、ADRは非公開なのでその心配がありません。

 2番目に柔軟な解決ができること。裁判は、証拠があって、こういう法律があるから、こういう結論になるという硬直的な話になります。ADRは和解ですから、いろんな情報を集め、意見を聞きながら、ここだというところで、勝ち負けなしに、双方がWin-Winで和解をしていただくという柔軟な解決を図ることができます。しこりが残りません。

 3番目の特徴は、迅速な手続きです。1回の期日で大体1時間から2時間を目安にして、できれば2回〜5回くらいの期日開催で決着できるようにしていきたいと考えています。

 4番目の特徴は専門家の活用。マンション問題研究会メンバーの弁護士の方々に調停員をお願いしています。さらに、大規模改修専門の一級建築士やマンション相談経験豊富なマンション管理士、そういう方に調停員になっていただきますので、一般の裁判と一味も二味も違う運営ができると考えております。

 最後の5番目の特徴は、費用が非常に安いこと。裁判になると時間もかかるし、費用も嵩みます。ADRは、安い費用で手軽にご利用できるシステムです。

 このようにメリットが多いADRですから、将来は、アメリカのように多くの方が利用していただく制度に成長するものと確信しています。


II.理事長派遣方式について
 次に、当会で実施しています理事長派遣方式をお話し申し上げます。最近は、高齢化も進み、理事長のなり手がない、ということで、国でも、区分所有者以外の第三者を管理者にしようという話が出ております。

 しかし、第三者を管理者にした場合、次の二つの大きな問題があります。一つは、管理者がお金を持ち逃げしたり、横領したり、高額契約など不正行為をすることがないとはいえません。これをいかに防止するか。また、被害が発生した場合にどう補償していくか、といった問題があります。

 もう一つの問題は、管理者に任せっきりでは組合の主体性がなくなってきます。果たしてこれでよいのか。すべての管理運営を管理者に任せておいて問題はないのか。また、かゆい所に手が届くような立派な運営や建物の維持修繕をしてくれる管理者が本当にいるのだろうか、といった問題です。

 私どもの理事長派遣方式では、この2点について、次のような方法で対処しています。

 まず、金銭事故防止対策として、現金や通帳は絶対に扱わないこととしています。派遣契約書の中にはっきり書きます。支出や契約の承認印は押しますが、通帳や印鑑の保管は致しません。通帳や印鑑は分別して副理事長や会計担当理事が保管し、あるいは、管理会社が通帳を保管することにしています。したがいまして、区分所有者は、理事長以外の役職には就いてもらう必要があります。管理者に任せっきりということにはなりません。

 次に、管理組合の主体性確保の問題ですが、派遣理事長は、決して独断専行をしないことを金科玉条にしています。いろいろな課題や問題点があれば、理事会を開いて、「こういう問題があるが、どうしましょうか。今こんなことをやらなければなりませんよ、どうしますか」ということを理事会に諮り、十分話し合いをし、結論が出て始めて実行します。

 必要であれば、総会を開いて承認をもらいます。合意ができなければ、火災や犯罪など、よほど緊急の場合を除いて、業務に遅れが出てもやむを得ないと割り切っています。

 管理組合が当会に理事長派遣を要請した理由ですが、必ずしも、高齢化ばかりとは限りません。高齢化のために要請したのは、7管理組合中2管理組合だけです。あとは、賃貸住戸が多くて役員のなり手がない、内部の紛争が激しく、混乱して理事会も総会も開けない、その他、大規模修繕の実施とか、管理体制の強化などが理事長派遣要請の理由です。

III.終わりに
 最後に、当会の業務推進の基本的考え方について述べさせていただきます。

 第一は、管理組合や組合員の皆様が今何を求めているかを探求し、それに応じていくことです。会社などでいわれている「お客様満足(Customer Satisfaction)」です。福管連が、ADRの認証を受けたのも、理事長派遣を開始したのも、管理組合や組合員の皆様がそれを求めていると判断したからです。今後とも、新しいニーズを見つける努力を続けていきます。

 第二は、マンション管理の全般にわたって、質の高いサービスを提供する体制を構築することです。ことマンション管理については、すべて、まず当会に相談してくださいといえる体制を造ることです。福管連では、これを「ワンストップサービス」といっています。

 もちろん、すべてにわたって、福管連だけでできるはずはありません。弁護士、一級建築士など各方面の専門家とネットワークを組み、ご協力を得ながら進めて参ります。そうして、常に業務の改善を図り、人材の育成に努めて、永続して発展する福管連を目指して努力していく所存でございます。


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